100年後を考える会社「日清製粉」に学ぶ長期経営のありかた

「100年後、あなたの会社は何を売っているでしょうか。」

こう聞かれて、すぐに答えられる人はほとんどいないでしょう。

商品も変わっているかもしれません。

お客様も、技術も、働き方も変わっているかもしれません。

そもそも100年後の社会がどうなっているのかさえ、私たちには分かりません。

それでも、「100年後」を見ながら経営しようとしている会社があります。

日清製粉グループです。

2026年8月、日清製粉グループの永木裕社長は、今後の経営について「100年後の企業価値」を意識しながら、収益モデルの構造転換を進める考えを示しました。

100年後。

普通の会社であれば、今期の売上、来期の利益、3年後や5年後の中期経営計画を考えるだけでも大変です。

それなのに、なぜ100年後なのでしょうか。

そこには、長く続く会社をつくるための重要なヒントが隠されています。


すでに125年以上続いている会社

日清製粉グループの歴史は、1900年に群馬県館林で創立されたところから始まります。

つまり、すでに125年以上の歴史を持つ企業です。

小麦粉から始まった事業は、その後、加工食品、酵母・バイオ、中食・惣菜、エンジニアリング、メッシュクロスなどへ広がってきました。

ここで興味深いことがあります。

125年以上続いた会社が、これから先も「今までと同じことを続けよう」としているわけではないのです。

むしろ日清製粉グループが進めているのは、変革です。

現在の中期経営計画では、事業ポートフォリオの再構築、海外事業の成長、研究開発、新規事業、M&A、デジタル化などを進めています。

長い歴史を持つ会社ほど、過去を守ろうとする。

そんなイメージを持つかもしれません。

しかし実際には、長く続いてきた会社だからこそ、

「今まで成功した方法が、これからも成功するとは限らない」

ということを知っているのかもしれません。


100年後を「予測」する必要はない

もちろん、日清製粉にも100年後の世界が分かっているわけではありません。

100年後の小麦価格。

100年後の食生活。

100年後のテクノロジー。

誰にも予測できません。

だから、「100年後を考える」とは、100年後の未来を正確に当てることではないのでしょう。

むしろ重要なのは、

未来を当てることではなく、未来が変わっても適応できる会社をつくること。

ここに長期経営の本質があるように思います。

日清製粉グループは現在、「自立と連合」という考え方を掲げています。

それぞれの事業会社が自ら競争力を高める「自立」。

その一方で、人材や技術、ノウハウ、拠点など、グループが持つ経営資源を組み合わせる「連合」。

一つの巨大な組織としてすべてを動かすのではなく、それぞれが強くなりながら、必要なところでは力を合わせる。

環境が大きく変わる時代には、こうした柔軟性そのものが企業の強さになるのかもしれません。


長く続く会社が守っているもの

ここで一つ、考えてみたいことがあります。

100年以上続く会社は、いったい何を守っているのでしょうか。

商品でしょうか。

昔からの仕事のやり方でしょうか。

組織でしょうか。

おそらく、それだけではありません。

商品は変わります。

技術も変わります。

組織も変わります。

日清製粉グループも、製粉から始まりながら、現在ではさまざまな事業を展開しています。

一方で、小麦粉を中心とした「食の安定供給」という社会的な役割は、現在の経営計画でも大切にされています。

つまり、長く続く会社が守っているのは、

「今の商品」ではなく、「なぜ自分たちは存在するのか」という部分なのかもしれません。

守るものと、変えるもの。

この二つを混同しないことが、長期経営には必要なのでしょう。


「今期の利益」と「100年後の価値」

経営をしていれば、どうしても目の前の数字を見なければなりません。

今月の売上。

今期の利益。

コスト。

資金繰り。

もちろん、どれも重要です。

しかし、100年後という時間軸を一度置いてみると、見え方が少し変わります。

たとえば、

「今期の利益にはプラスだが、会社の信用を失う判断ではないか」

「短期的にはコストになるが、未来の人材を育てる投資ではないか」

「今は儲かっているが、この事業だけに依存していていいのか」

そんな問いが生まれます。

研究開発も、人材育成も、新規事業への挑戦も、短期的に見れば利益を減らすことがあります。

しかし、それが10年後、20年後の会社をつくるかもしれません。

日清製粉グループも、現在の中期経営計画の中で、設備投資だけでなく、M&A、研究開発、デジタル、人材育成などへの戦略投資を進めています。

「今いくら儲かるか」と「未来にどれだけ価値を残せるか」。

経営には、その両方を見る視点が必要なのでしょう。


100年後から、今日を見てみる

私たちが100年後を予測することはできません。

でも、100年後から逆算して「今日」を考えることはできます。

もし、自分の会社が100年後も存在しているとしたら。

今やっている仕事のうち、何が残っているでしょうか。

反対に、何はなくなっているでしょうか。

そして、

今から始めておかなければならないことは何でしょうか。

100年後に、今の商品が残っている必要はありません。

100年後に、今の仕事のやり方が残っている必要もありません。

それでも、

「なぜこの会社が存在するのか」

という部分は、残っているかもしれません。

125年以上の歴史を持つ日清製粉グループが、さらに100年後を考えている。

その姿から見えてくるのは、意外にも「守り続ける経営」ではありません。

長期経営とは、変わらないことではない。

長く続くために、変わり続けること。

そして最後に、一つだけ問いを残したいと思います。

あなたの会社が100年後も続いているとしたら、今、何を残し、何を変えますか。

以上

「一流の思考ラボ」編集長でした。


参考資料・出典

・日清製粉グループ「沿革」

・日清製粉グループ「長期ビジョン」

・日清製粉グループ「経営理念」


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