売れなくなった商品。
製造途中で使えなくなったもの。
役目を終えた材料。
企業の中では、さまざまなものが「廃棄品」になります。
普通なら、そこで考えるのは、
「どう処分するか」
ではないでしょうか。
ところが、その問いを、
「これを別の商品として売ることはできないだろうか?」
に変えると、まったく違うものが見えてくるかもしれません。
2026年9月10日、豊島株式会社が本格展開を発表した「Cy:Make(サイ メイク)」は、そんなことを考えさせてくれる取り組みです。
180年以上続く繊維商社・豊島
豊島株式会社は、1841年創業の企業です。
綿の仲買から始まり、現在では繊維原料、原糸、テキスタイル、アパレル製品など、素材から最終製品まで幅広く手がけています。
近年では繊維だけにとどまらず、雑貨・食品、テクノロジー・サービスなどにも事業領域を広げています。
そんな繊維商社が今回目をつけたのが、
捨てられるはずだった「化粧品」
でした。
一見すると、
「なぜ繊維の会社が化粧品を?」
と思うかもしれません。
その理由は、「Cy:Make」の仕組みを見るとよく分かります。
廃棄される化粧品を、生地や雑貨の「色材」へ
「Cy:Make」とは、豊島が、化粧品をインク化する独自技術を持つ株式会社モーンガータと協業して進めるプロジェクトです。
化粧品メーカーなどでは、研究・開発の過程などで市場に出せなくなった化粧品が発生します。
また、私たちの家庭にも、使い切れないまま役目を終えてしまうコスメがあります。
「Cy:Make」では、そうした化粧品を回収し、モーンガータの技術を使ってインク化。
化粧品が持っていた繊細なラメやニュアンスカラーを生かしながら、生地や雑貨などに活用し、新たな製品へと生まれ変わらせます。
つまり、
廃棄される化粧品
↓
インク
↓
生地・雑貨などの新しい製品へ
という循環をつくろうとしているのです。
実際に2026年には、ルミネが開催したイベントで、この仕組みを活用したキーホルダーやコースターも制作されています。
ここまで見ると、なぜ繊維を扱う豊島が化粧品に関わっているのかも見えてきます。
豊島が化粧品そのものを売ろうとしているわけではありません。
注目したのは、
化粧品が持っている「色」という価値
だったのです。
価値がなくなったのではなく、「役割」が終わっただけ
市場に出せなくなった化粧品を、
「化粧品」
としてだけ見れば、廃棄するしかないものかもしれません。
しかし、
「色を持った素材」
として見ればどうでしょうか。
そこには、まだ使える価値が残っています。
つまり、
価値がなくなったのではなく、その用途では価値を生まなくなっただけ。
化粧品としての役割が終わったからといって、素材としての役割まで終わったわけではありません。
見方を変えることで、「捨てるもの」だったはずの化粧品が、新しい商品を生み出す材料になります。
そして、もう一つ興味深いのは、この仕組みを豊島だけで実現しているわけではないことです。
化粧品をインクに変える技術は、その技術を持つモーンガータと組む。
自社にない技術は、持っている企業と組む。
その組み合わせによって、それまで価値を生まなかったものが、新しい商品へ変わる可能性もあります。
今回の主役はあくまで「廃棄品の価値を変える」という発想ですが、企業同士がそれぞれの強みを持ち寄ることも、新しい価値を生み出す方法の一つなのだと思います。
廃棄品は「宝の山」かもしれない
これは、化粧品だけの話ではありません。
会社の中を見渡してみると、
売れ残った商品。
製造工程で出る端材。
規格から外れてしまったもの。
使われなくなった設備。
活用されていないデータやノウハウ。
さまざまな「もう使えないもの」があるはずです。
そして多くの場合、それらは、
廃棄品 → 処分 → コスト
という流れで考えられます。
しかし、用途や届ける相手を変えることができれば、
廃棄品 → 原材料 → 新しい商品 → 売上
へ変わる可能性があります。
これまでお金を払って処分していたものが商品になれば、廃棄にかかっていた負担を減らしながら、新たな収益機会をつくれるかもしれません。
もちろん、すべての廃棄品がお金になるわけではありません。
再利用するための加工費や回収費、品質管理など、新たなコストも発生します。
それでも、
「捨てるものだから価値がない」
と最初から決めてしまうのと、
「別の使い方はないか?」
「別の業界なら使えないか?」
「別のお客様なら欲しがらないか?」
と一度考えてみるのとでは、大きな違いがあります。
豊島の「Cy:Make」は、環境に配慮した取り組みであると同時に、そんな発想の転換を見せてくれる事例です。
あなたの会社に眠っている「価値のないもの」は、本当に価値がないのでしょうか。
もしかすると、次の利益を生み出す「宝の山」を、私たちは毎日捨てているのかもしれません。
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
