会社員にも「武者修行」が必要?|いつもの職場を離れると、人が成長する理由

プロ野球では、若手選手などが海外のウィンターリーグへ派遣されることがあります。

所属球団に残って練習することもできるのに、なぜわざわざ言葉も文化も違う場所へ行くのでしょうか。

そこには、技術を磨くことだけではない意味があります。

違う監督。

違うチームメイト。

違う野球観。

そして、自分のことをほとんど知らない人たち。

いつもの環境を離れれば、

「今までの当たり前」が、当たり前ではなくなります。

実は今、会社員の世界でも、これに少し似た「武者修行」が注目されています。

会社を辞めるわけではありません。

今いる会社に所属したまま、あえて普段とは違う場所へ飛び込んでみる。

そこで新しい仕事や人と出会い、経験を持ち帰る。

こうした学び方は、

「越境学習」

と呼ばれています。


会社員が、会社の外へ学びに行く

2026年9月8日

NPO法人二枚目の名刺と、パーソルワークスイッチコンサルティング株式会社は、業務提携し、越境学習とキャリア支援を組み合わせた取り組みを始めると発表しました。

参加者が本業とは異なる環境で社会課題に取り組み、そこで得た経験や自身の変化を振り返り、本業での成長にもつなげていくものです。

面白いのは、

会社を辞めなくても、「いつもの会社の外」で学ぶ

というところです。

私たちは仕事で成長しようとすると、

「もっと勉強しよう」

「もっと経験を積もう」

「もっと仕事を頑張ろう」

と考えます。

もちろん、それも大切です。

でも、成長する方法は、

今いる場所でもっと頑張ることだけではない

のかもしれません。


同じ場所にいると、「自分の役割」が決まっていく

同じ会社で長く働いていると、少しずつ自分の役割ができてきます。

「あの仕事なら○○さん」

「数字なら○○さん」

「お客様対応なら○○さん」

周囲から期待される役割が生まれることは、決して悪いことではありません。

むしろ、それだけ信頼されている証拠でもあります。

ただ、一方で、

「自分はこういう人間だ」

という思い込みも生まれやすくなります。

「自分は人前で話すのが苦手」

「自分はリーダーには向いていない」

「自分は企画より実務タイプ」

ところが、それは本当に自分の能力なのでしょうか。

もしかすると、

今いる環境の中で、そういう役割になっているだけ

かもしれません。


場所が変わると、「知らなかった自分」が出てくる

たとえば、普段は上司から指示を受けて仕事をしている人が、会社の外のプロジェクトに参加したとします。

そこには、自分のことを知っている上司はいません。

いつもの肩書も通用しません。

「誰かが決めてくれる」

と思っていても、誰も決めてくれない。

すると、

「では、自分がやります」

と言わなければ物事が進まないことがあります。

やってみる。

意外とうまくいく。

そこで初めて、

「自分は人をまとめることもできるんだ」

と気づくかもしれません。

逆もあります。

会社では仕事ができると思っていたのに、違う環境へ行った途端、思うように成果を出せない。

それもまた、大切な発見です。


「自分の実力」と「環境のおかげ」は、意外と分からない

同じ環境に長くいると、もう一つ分かりにくくなることがあります。

それは、

「どこまでが自分の力なのか」

です。

会社の看板。

これまで築かれた信用。

優秀な同僚。

整った仕組み。

長年付き合いのある取引先。

私たちは普段、こうしたものに支えられながら仕事をしています。

もちろん、それでいいのです。

でも、違う環境へ行くと、それらが一度なくなります。

そこで、

「会社の名前がなくても、自分は何ができるだろう」

と考えることになります。

これは少し怖いことでもあります。

でも、自分の本当の強みを知るには、とても良い機会なのかもしれません。


「当たり前」が通用しない場所へ行く

会社には、それぞれ独自の常識があります。

「会議とはこういうもの」

「営業とはこうするもの」

「仕事とはこう進めるもの」

毎日その中にいると、それが普通になります。

でも、別の組織へ行けば、

「えっ、そんなやり方をするの?」

ということがあります。

逆に、自分たちが普通にやっていたことを、

「それ、すごくいいですね」

と言われることもあります。

そこで初めて、

自分たちの会社の良いところにも、変なところにも気づく。

外へ出るということは、新しい知識を得ることだけではありません。

自分たちの「当たり前」を、外から見直すことでもあるのです。


会社は、社員を外へ出せるか

越境学習を会社側から考えると、少し怖い面もあります。

優秀な社員ほど、

できれば社内にいてほしい。

外の世界を知れば、別の会社に魅力を感じるかもしれません。

新しい人脈ができ、転職を考えるきっかけになる可能性もあります。

それなら、

「外へ出さない方が安全だ」

と考える会社があっても不思議ではありません。

でも、それでは社員が触れられる世界も、自社の中だけになります。

本当に人を育てようとするなら、

「外を知らないから残っている人」ではなく、
「外を知ったうえで、ここで働きたいと思う人」を増やす。

そして、ときには、

「うちの会社では経験できないことを、外で経験しておいで」

と送り出す。

それも、一つの人材育成なのかもしれません。


武者修行は、「帰ってきてから」が本番

ここで、もう一度ウィンターリーグを考えてみます。

日本では出会えなかった技術的な考え方。

初めて経験するトレーニング方法。

言葉や文化、生活環境の違いから生まれるストレス。

そうした慣れない環境の中で、選手はさまざまなことを経験します。

そして、それを日本へ持ち帰る。

そこで得るものは、野球の技術だけではないでしょう。

慣れない場所で悩み、考え、自分なりに乗り越えた経験そのものが、その後の野球人生、さらには人生そのものの糧になることもあるはずです。

会社員も同じです。

外で新しい仕事のやり方を学ぶだけではありません。

自分の強みに気づく。

自分の弱さを知る。

今まで当たり前だった会社の良さに気づく。

逆に、

「これは変えられるのではないか」

と気づくこともある。

つまり、武者修行で持ち帰るのは、

「外で学んだ答え」だけではありません。

外へ出たことで変わった、自分自身の「ものの見方」も持ち帰る。

そこに、大きな意味があるのではないでしょうか。


成長できないときは、「努力する場所」を変えてみる

私たちは成長が止まったと感じると、

「もっと頑張ろう」

と考えます。

でも、努力が足りないのではなく、

同じ環境の中だけで努力していることが原因

ということもあるのかもしれません。

そんなときは、会社を辞めなくてもいい。

別のプロジェクトに参加する。

普段とは違う人と仕事をする。

今まで経験したことのない役割を引き受ける。

ほんの少しだけ、いつもの境界線を越えてみる。

そして、そこで得たものを持って帰ってくる。

外を知るからこそ、今いる場所の良さも、変えるべきところも見えてきます。

成長するために必要なのは、いつも努力の「量」を増やすこととは限りません。

ときには、努力する「場所」を変えてみる。

もし最近、

「毎日同じことの繰り返しだな」

と感じているなら、

少しだけ、いつもの世界の外へ出てみてもいいのかもしれません。

会社員にも、ときには「武者修行」が必要です。

そして本当の武者修行は、

外へ出たときではなく、そこで得たものを持って帰ってきたときから始まるのかもしれません。

以上

「一流の思考ラボ」編集長でした。


参考・出典


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