失敗した道が、正しい道につながることもある|ゲーム開発の失敗からSlackが生まれるまで

仕事で使うチャットツール「Slack(スラック)」。

社内の連絡や情報共有など、世界中の企業で使われているサービスです。

実は、このSlack。

もともとはゲームを開発していた会社から生まれたことをご存じでしょうか。

しかも、そのゲームは成功しませんでした。

多くの時間とお金をかけて開発したものの、事業として続けることができなくなったのです。

普通なら、そこで終わってしまう話かもしれません。

ところが、この失敗が思いがけない未来につながります。

一体、何が起きたのでしょうか。

本当に作りたかったのは、ゲームだった

2009年、スチュワート・バターフィールドらが設立した会社「Tiny Speck」。

彼らが目指していたのは、オンラインゲームの開発でした。

そのゲームの名前は「Glitch(グリッチ)」。

プレイヤー同士が交流しながら、不思議な世界を探索するゲームです。

開発には多くの人が関わり、資金も投入されました。

2011年には一般向けに公開されましたが、思うように利用者は増えません。

改善を重ねたものの、事業を継続できるほどの成果にはつながらず、2012年11月、サービス終了が発表されました。

数年間かけて取り組んできたゲーム開発は、事業として失敗に終わったのです。

しかし、彼らの手元には、ゲームとは別のものが残っていました。

ゲームは失敗。でも、別のものが残っていた

ゲームの開発中、Tiny Speckには一つの課題がありました。

開発メンバーが、離れた場所で仕事をしていたのです。

カナダのバンクーバー。

アメリカのサンフランシスコ。

そしてニューヨーク。

離れた場所にいるメンバー同士が、どうすれば円滑に情報を共有できるのか。

そこで彼らは、既存のチャット技術を使いながら、自分たちの仕事に合うように機能を追加していきました。

過去のメッセージを保存する。

必要な会話を検索できるようにする。

チーム内の情報を共有しやすくする。

ゲームを開発するために、日々の仕事を便利にしていったのです。

やがて、この社内ツールは、彼らにとって欠かせない存在になりました。

そして、ゲームの終了を決めたとき、あることに気づきます。

ゲームはうまくいかなかった。でも、このツールは便利なのではないか。

自分たちが使って便利だったものは、ほかの会社でも役に立つかもしれない。

そこで彼らは、ゲーム開発から方向転換し、社内ツールを企業向けのサービスとして作り直すことにしました。

主役ではなかったものが、主役になった

2013年、開発したツールをほかの企業にも試してもらい、改良を重ねました。

そして2014年2月、Slackが一般向けに正式公開されます。

その後、Slackは多くの企業に広がり、世界的なビジネスツールへと成長しました。

ここで興味深いのは、最初からSlackを作ろうとしていたわけではないということです。

彼らが作りたかったのは、あくまでゲームでした。

社内の連絡ツールは、そのゲームを開発するために必要だったもの。

つまり、最初は主役ではなかったのです。

ところが、ゲームが失敗したことで、脇役だったツールに新たな可能性が見つかりました。

もし、ゲームを開発していなければ。

離れた場所で働く仲間がいなければ。

日々の不便を解消しようとしていなければ。

Slackは、今とは違う形になっていたかもしれません。

成功につながったのは、ゲーム開発の失敗そのものではありません。

その過程で生まれた価値を、見逃さなかったこと。

そこに、この物語の面白さがあるように思います。

失敗した道が、正しい道につながることもある

私たちは、何かに失敗すると、それまでの時間まで無駄だったように感じてしまうことがあります。

一生懸命勉強したのに、試験に落ちてしまった。

新しい仕事に挑戦したのに、思うような成果が出なかった。

時間をかけて準備した企画が、採用されなかった。

そんなとき、

「あの時間は何だったのだろう」

と思ってしまうかもしれません。

もちろん、失敗した経験が、必ず成功につながるわけではありません。

ただ、目指していた結果が得られなかったからといって、そこまでの経験がすべて無駄になるとも限らないのです。

試験に落ちても、身につけた知識は残る。

仕事がうまくいかなくても、新しく得た経験や人とのつながりは残る。

採用されなかった企画にも、別の場所で生かせるアイデアがあるかもしれません。

Slackも、最初に目指したゲーム事業では成功できませんでした。

しかし、ゲームを作るために積み重ねた工夫が、別の事業の出発点になりました。

目指していた目的地にたどり着かなかったからといって、そこまで歩いた道のりまで間違いだったとは限りません。

Tiny Speck社がSlackを生み出したように、その道の先に、思いもしなかった新しい目的地が待っていることもあるのです。

もし今、思うようにいかないことがあったとしても。

これまでの経験の中に、まだ気づいていない価値が残っているかもしれません。

以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。

参考・出典

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