なぜ9月が「長月」?|答えは昔の人が感じた「9月」にあった

9月のことを、昔の呼び方で「長月(ながつき)」といいます。

でも、なぜ「長月」なのでしょうか。

1か月が長いわけではありません。

調べてみると、よく出てくるのが、

「夜長月(よながづき)」

という言葉です。

秋になり、だんだん夜が長くなる。

その「夜長月」が縮まって「長月」になったという説です。

なるほど。

でも、調べていくと意外なことが分かりました。

実は「長月=夜長月」が正解と決まっているわけではないのです。

「長月」の由来は、一つではなかった

「夜長月」は古くから知られる説ですが、「長月」の語源そのものは、はっきり分かっていません。

ほかにも、

「稲熟月(いなあがりづき)」が変化したという説。

「稲刈月(いなかりづき)」が変化したという説。

「穂長月(ほながづき)」が変化したという説。

さらに国文学者の折口信夫さんは、5月と9月が長雨の時季であることに着目し、「ながめ」との関係を考えました。

ここで、

「稲熟月(いなあがりづき)」や「稲刈月(いなかりづき)」から、どうやって「長月」になるの?

と疑問に思う方もいるかもしれません。

私も思いました。

ただ、これらはあくまで昔から唱えられてきた語源説です。

「稲熟月のこの音がこう変化して長月になった」と、現在はっきり証明されているわけではありません。

そもそも「長月」自体、語源が明らかになっていない言葉なのです。

だから今回は、どの説が正解なのかを決めるのではなく、なぜ昔の人たちが「夜」「稲」「雨」と9月を結びつけて考えたのかを見てみます。

答えを一つに決めず、いくつもの説を並べてみる。

すると、「長月」の語源ではなく、昔の人が過ごしていた9月の景色が見えてきます。

夜が長くなる。

田んぼでは稲が熟し、収穫を迎える。

秋の雨が降る。

さらに旧暦9月には「菊月」「紅葉月」「木染月」といった別名もありました。

菊が咲き、木々が色づいていく。

昔の人にとって9月は、そんな季節だったのです。

昔の「9月」は、今の9月ではない

ここで、一つ大事なことがあります。

昔の人が「長月」と呼んでいた9月と、現在の9月は、同じ季節ではありません。

「長月」はもともと旧暦9月の呼び名です。

旧暦の季節や行事に合わせて生まれた和風月名は、現在の暦に当てはめると、季節感におよそ1〜2か月のずれがあります。

だから、昔の人が「9月」と聞いて思い浮かべたのは、現在の9月より秋が深まった頃の景色でした。

ここで、ちょっと想像してみます。

昔の人は、今の9月を「長月」と呼ぶ?

もし「長月」という名前をつけた昔の人が、現代のまだまだ夏真っ盛りの9月にタイムスリップしてきたら。

もしかすると、驚くかもしれません。

「これのどこが夜長月なんだ」と。

「夜長月」どころか、「夜短月ではないか」。

そんなツッコミが入るかもしれません。

もちろん、これは想像です。

でも、こんな想像ができるのも、昔の人が「9月」と呼んでいた季節と、私たちが今「9月」と呼んでいる季節が、少し違っているからです。

もしその人が現代の10月、11月まで過ごしたら、

「そうそう。私たちが9月と呼んでいたのは、こんな季節だった」

と、ようやく納得するのかもしれません。

答えよりも、面白いものが見つかった

「なぜ9月を長月と呼ぶのか」

その答えを探して始めた今回の記事。

ところが、調べてみると、本当の語源は今もはっきりしていませんでした。

でも、私はむしろ、その方が面白いと思います。

夜長月。

稲熟月。

稲刈月。

長雨。

菊、紅葉、色づく木々。

一つの正解は残っていなくても、いくつもの説を重ねることで、昔の人が見ていた「9月」が浮かび上がってきます。

しかも「ながつき」という言葉は、『日本書紀』や『万葉集』にも登場するほど古い言葉です。

1000年以上前の人が「ながつき」と呼んでいた月を、私たちも今「長月」と呼んでいます。

ただ、見ている景色は同じではありません。

言葉は同じなのに、景色は違う。

それでも「長月」という名前は、今まで残ってきました。

「長月」とは、昔の人が見ていた秋の景色を、1000年以上先まで運んできた言葉なのかもしれません。

皆さんにとっての「長月(9月)」は、どんな月でしょうか。

以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。


参考・出典


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