「大規模なコスト削減」
そう聞くと、どんな会社を想像するでしょうか。
人を減らす。
設備を減らす。
新しい投資を控える。
つまり、
「会社を少し小さくして、お金を残す」
そんなイメージを持つ人もいるかもしれません。
ところが、ある会社が行ったコスト削減は少し違いました。
エキサイト株式会社。
1997年に設立されたインターネット企業で、現在はメディアやブロードバンド、オンライン相談、SaaS・DXなど、さまざまな事業を展開しています。
そんなエキサイトが実現したのは、
会社を小さくするためではなく、事業を成長させるためのコスト削減
でした。
では、何を変えたのでしょうか。
成長すればするほど、コストも増えていた
今回の舞台となったのは、エキサイトが長年運営している通話相談サービスです。
利用者とカウンセラーや占い師を電話でつなぎ、相談できるサービスですが、利用者が増えるにつれて大きな問題が出てきました。
利用者が増えるほど、通信コストや設備・運用の負担まで増えてしまう。
事業が成長するのは、本来なら喜ばしいことです。
ところが、
売上が増える。
利用者が増える。
そのたびに設備を増やし、管理する仕事も増える。
さらに従来の仕組みでは、サービスを変更するときに外部の事業者へ依頼する必要があり、機能を改善することも簡単ではありませんでした。
つまり問題は、
「コストが高い」ことだけではなかったのです。
「成長すればするほど、コストと負担まで増えていく仕組み」
そのものにありました。
「全部、自分たちで持つ」をやめてみる
そこでエキサイトは、通話サービスを支える基盤そのものを見直します。
ポイントは、
「全部、自分たちで持たない」
ことでした。
従来のように、利用者が増えるたびに設備を増強し、自分たちで管理する。
それでは、事業が成長するたびに負担も大きくなります。
そこで通信インフラについては、外部のクラウド型サービスを利用する形へ変更しました。
これだけを見ると、
「自分たちでやるのをやめて、全部外注したのか」
と思うかもしれません。
でも、違います。
ここが今回の事例で、最も面白いところです。
「全部自分でやらない」と「全部任せる」は違う
エキサイトは、システムを丸ごと外部に任せたわけではありません。
通信インフラそのものは外部サービスを活用する。
一方で、
利用者に近いサービス固有の機能は、自社で開発する。
という形を選びました。
つまり、
自分たちで持たなくてもいいものは、持たない。
でも、
自分たちで磨くべきものは、自分たちで磨く。
「自前か、外注か」
という二択ではありません。
何を自分たちでやり、何を外部の力に任せるのかを選び直した
ということです。
利用者は増えたのに、コストは大幅に減った
新しい通話基盤への移行は2021年に完了しました。
その後もサービスは成長し、2026年現在の利用者数は、新基盤導入時と比べて約2.5倍になっています。
ところが、以前のように利用者が増えるたびに設備を増強する必要はなくなりました。
さらに通話方法なども見直した結果、エキサイトの取締役は、現在までのコスト削減効果について、
少なく見積もっても5億円を超えている
と説明しています。
通信コストも、以前のおよそ3分の1まで削減できたといいます。
利用者は増えた。
でも、コストは減った。
なぜそんなことができたのか。
答えは、単純に「お金を使わなくなった」からではありません。
自分たちでお金をかける場所を、選び直したからです。
削ったお金を、どこへ使ったのか
さらに重要なのは、その先です。
コストを減らしたところで終わっていません。
通話基盤の負担を減らしたことで生まれた余力を、今度はサービスそのものの改善へ振り向けました。
利用者と相談相手とのマッチング精度を高める。
決済手段を増やす。
利用者と専門家との関係を深める機能を開発する。
つまり、
「使うお金を減らした」というより、「お金を使う場所を変えた」
と考えた方が近いのかもしれません。
ここに、今回のコスト削減の大きなヒントがあります。
良いコスト削減は、会社を小さくするのではなく、むしろ成長させる
コスト削減というと、
「何を削るか」
ばかりを考えてしまいます。
でも、本当に考えるべきなのは、
「何を削って、どこに力を戻すのか」
なのではないでしょうか。
必要なものまで削れば、会社は弱くなります。
人を減らしすぎれば、サービスが悪くなるかもしれません。
投資を止めれば、未来の成長まで止めてしまうかもしれません。
一方で、これまで何となく自分たちで抱えていたものを手放し、そこで生まれた余力を、
「自分たちにしかできないこと」
へ使う。
それなら、コスト削減は会社を小さくするためではなく、会社をさらに成長させるための手段にもなります。
「全部自分でやる」は、本当に強いのか
これは会社経営だけの話ではないと思います。
仕事でも、
「自分でやった方が早い」
「人に頼むのは申し訳ない」
「全部把握しておきたい」
と思うことがあります。
もちろん、自分でやるべき仕事もあります。
でも、すべてを自分で抱えれば、本当に時間を使うべき仕事に時間を使えなくなるかもしれません。
だから大切なのは、
「全部自分でやらない」ことではありません。
「自分でやるべきことを選ぶ」こと。
もし仕事や会社の中で、
「もっと人が必要だ」
「もっとお金が必要だ」
「もっと時間が必要だ」
と思うことがあったら、
増やす前に、一度こう考えてみてもいいのではないでしょうか。
「これは、本当に自分たちでしなくちゃいけないことなのか?」
そして、
「外部の力を借りた方が、コストを抑えられるものはないだろうか?」
と。
もしそこで削減できる費用や時間が見つかれば、その余力を自社の強みとなる部分へ使うことができます。
強みをさらに磨く。
サービスをもっと良くする。
新しいことへ投資する。
そうして生まれた余力が、次の事業成長につながっていく。
今回のエキサイトのニュースから見えてくるのは、
成長するために必要なのは、何かを増やすことだけではない
ということです。
何を自分たちでやり、
何を外部の力に任せるのか。
手放す決断をすることも、成長戦略の一つなのかもしれません。
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
