スーパーに行くと、夕方から夜にかけて増えてくるものがあります。
「20%引き」
「30%引き」
そして、待っていましたと言わんばかりの、
「半額」
のシールです。
お弁当やお惣菜、お寿司などが半額になっていると、ちょっと得した気分になります。
でも、ここで一つ疑問があります。
半額にしてしまって、本当にスーパーは儲かるのでしょうか。
それほど安く売れるなら、最初からもっと安くしてもよさそうです。
実は、あの小さな値引きシールには、スーパー経営の難しさが詰まっています。
スーパーが戦っているのは「時間」
たとえば、あるお弁当を500円で販売するとします。
朝の時点では500円で売れる可能性があります。
昼でも500円で売れるかもしれません。
ところが閉店1時間前。
同じお弁当がまだ10個残っていたら、状況はまったく違います。
そのまま500円で売ろうとして、結局売れなければ、廃棄しなければならない可能性があります。
500円で売れる可能性を追うのか。
それとも、
300円や250円でも、今のうちに売るのか。
スーパーは毎日のように、この判断をしています。
つまり食品には、
時間が経つほど「売れる可能性」が変わっていく
という特徴があるのです。
「半額=赤字」とは限らない
ここで大切なのは、
販売価格と利益は同じではない
ということです。
500円のお弁当を250円で売れば、当然、500円で売った場合より得られる金額は少なくなります。
しかし比較すべきなのは、
「500円で売る場合」と「250円で売る場合」
だけではありません。
閉店間際なら、
「250円で売る」か「売れずに残る」か
という比較になることがあります。
売れ残れば、商品から売上を得られないだけでなく、廃棄に伴う負担も発生します。
だからスーパーにとっては、
値下げしてでも売り切った方が合理的な場合がある。
半額シールは単なるサービスではありません。
在庫と時間を考えた、立派な経営判断なのです。
では、なぜ最初から安くしないのか
ここでもう一つ疑問が生まれます。
半額でも売るくらいなら、
最初から少し安く販売すればいいのではないか。
ところが、それでは本来500円で買ってくれる人からも、安い価格しか受け取れなくなってしまいます。
昼に500円で買いたい人もいる。
夕方に500円で買う人もいる。
そして閉店間際なら、250円になれば買う人もいる。
時間によって、商品の売れ方は変わります。
だから、
できるだけ通常価格で販売しながら、売れ残りそうになった商品だけ価格を下げる。
この判断が重要になります。
問題は、
「いつ、何%下げるか」
です。
早く値下げしすぎれば、利益を取り逃がします。
逆に値下げが遅すぎれば、商品が売れ残ります。
実は「半額シールをいつ貼るか」は、想像以上に難しい判断なのです。
そして今、「半額にする時間」をAIが考え始めている
これまで値引きのタイミングや割引率は、店舗スタッフの経験や感覚に頼る部分が少なくありませんでした。
しかし現在、その世界にもAIが入り始めています。
販売実績だけではありません。
曜日。
天候。
来店客数。
現在の在庫。
商品の売れ行き。
こうしたデータから、
「この商品を、いつ、どのくらい値下げすればいいか」
をAIで予測する取り組みが進んでいます。
2026年にスーパーマーケットバロー20店舗で行われた実証では、AIによる需要予測や値引きの最適化などによって、食品廃棄量が12.6%減少。
さらに売上高は2.9%、売上総利益は4.1%増加しました。
つまりAIが目指しているのは、
「とにかく値下げすること」ではありません。
できるだけ高く売りながら、できるだけ捨てない。
その最適な境目を探しているのです。
「高く売る」ことだけが利益ではない
スーパーの半額シールを見ると、
「安くなった」
と考えます。
でも経営する側から見ると、まったく違う景色が見えます。
通常価格を守りすぎれば、商品が残る。
値下げを急ぎすぎれば、本来得られた利益を失う。
仕入れを減らしすぎれば、今度は売り切れて販売機会を逃す。
だから大切なのは、
一番高く売ることではなく、全体として最も良い結果になるところを探すこと。
これはスーパーだけの話ではありません。
在庫をどこまで持つのか。
人員をどこまで配置するのか。
いつ撤退するのか。
どこまで価格を守るのか。
経営には、「最大」を目指すより**「最適」を探す方が重要な場面**がたくさんあります。
夕方のスーパーに貼られる、小さな半額シール。
あれはもしかすると、
「利益を最大化するとは、最も高く売ることではない」
という経営の基本を、私たちの身近なところで教えてくれているのかもしれません。
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
