「頼まれた仕事をすぐやる人」ほど、仕事が終わらなくなる理由

「これ、ちょっとお願いしてもいいですか?」

そう言われたら、すぐに取りかかる。

メールが届けば、すぐに返信する。
チャットが来れば、すぐに確認する。
誰かに頼まれれば、できるだけ早く対応する。

こういう人を見ると、

「仕事が早い人だな」

と思うかもしれません。

もちろん、頼まれた仕事への対応が早いことは悪いことではありません。

相手を待たせない。
仕事を止めない。
「あの人に頼めば早い」という信頼にもつながります。

ところが、何でもすぐにやっているのに、

なぜか自分の仕事だけが終わらない。

そんなことがあります。

実は、「すぐやること」と「仕事が早いこと」は、同じではないのかもしれません。

一日中働いたのに、仕事が進んでいない

たとえば朝、今日は重要な資料を完成させようと決めていたとします。

パソコンを開いて、資料を作り始める。

すると、

「この数字、確認してもらえますか?」

と頼まれる。

5分くらいで終わりそうなので、先にやる。

資料に戻ろうとすると、今度はメールが届く。

「これもすぐ返した方がいいな」

返信する。

再び資料を開くと、チャットが来る。

「少しだけ相談できますか?」

対応する。

気づけば夕方です。

不思議なことに、一日中仕事をしていたはずなのに、朝やろうとしていた資料はほとんど進んでいません。

決してサボっていたわけではありません。

むしろ、ずっと働いていました。

それでも仕事が終わらない。

なぜでしょうか。

「反応する仕事」と「進める仕事」は違う

仕事には、大きく分けると二つの性質があります。

一つは、「反応する仕事」。

メールへの返信、質問への回答、急に頼まれた確認など、外からやってきたものに対応する仕事です。

もう一つは、「進める仕事」。

企画を考える。
資料を作る。
新しい仕組みをつくる。
会社の将来について考える。

自分から時間を確保しなければ、なかなか前へ進まない仕事です。

厄介なのは、反応する仕事の方が「仕事をした感覚」を得やすいことです。

メールを返せば、一つ終わる。
質問に答えれば、一つ終わる。
頼まれごとを処理すれば、一つ終わる。

小さな「完了」が次々生まれます。

一方、重要な企画を一時間考えても、完成しないことがあります。

そのため、目の前に次々現れる仕事へ反応しているうちに、本当に進めるべき仕事が後ろへ追いやられてしまうことがあります。

すぐ始める人より、「終わらせる人」

ここで、一度「仕事が早い」という言葉を考えてみたいと思います。

頼まれてから着手するまでが早い。

これは確かに一つの能力です。

しかし、仕事で本当に必要なのは、

どれだけ多くの仕事に着手したか

ではありません。

最終的には、

どれだけ必要な仕事を終わらせたか

です。

10の仕事にすぐ手をつけても、10の仕事が途中になっている。

それよりも、今やるべき仕事を見極め、一つずつ確実に終わらせる。

仕事ができる人とは、もしかすると「すぐ始める人」以上に「きちんと終わらせる人」なのかもしれません。

仕事を速くするだけでは、解決しない

では、もっと作業スピードを上げればいいのでしょうか。

もちろん、それも一つの方法です。

しかし、ここには限界があります。

一日にできる仕事の量には限りがあるからです。

仮に今日、自分が処理できる仕事が10だとします。

そこへ15の仕事を引き受ければ、どれだけ効率よく働いても、どこかに無理が出ます。

それなのに私たちは、仕事が終わらないと、

「もっと効率よくやらなければ」

「自分の仕事が遅いのではないか」

と、仕事の出口ばかり速くしようとすることがあります。

でも、問題は出口ではなく、入口かもしれません。

どれだけ速く処理するかだけでなく、どれだけ引き受けるか。

仕事が終わらないときは、こちらも見直す必要があります。

「断ること」も仕事の一つ

頼まれた仕事を断ることに、抵抗を感じる人もいるでしょう。

「仕事ができないと思われそう」

「相手に悪い」

「頼まれたのだから、やるべきだ」

そう考えてしまう。

でも、すでに10の仕事を抱えている人が、さらに11個目、12個目を引き受ければどうなるでしょうか。

先に約束していた仕事が遅れる。

一つひとつの仕事が雑になる。

場合によっては、結局誰かに迷惑をかけてしまいます。

だから、仕事を断ることは必ずしも無責任ではありません。

「今日は難しいですが、明日ならできます」

「今こちらを優先しています。どちらを先にしましょうか」

「その仕事なら、○○さんにお願いした方が早いと思います」

そして、ときには、

「今は引き受けられません」

と言う。

あとでやる。期限を相談する。誰かに任せる。断る。

これらもすべて、仕事を前へ進めるための選択肢です。

自分の「容量」を知っているか

そして、ここでもう一つ大切なことがあります。

何を引き受け、何を断るかを判断するには、

自分がどれくらい仕事を抱えられる人なのか

を知っていなければなりません。

人によって、仕事の処理能力は違います。

得意な仕事なら30分で終わる。
苦手な仕事なら2時間かかる。

午前中は集中できる。
午後になると判断力が落ちる。

複数の仕事を並行して進められる人もいれば、一つずつ終わらせた方が力を発揮できる人もいます。

大切なのは、どちらが優れているかではありません。

自分は、どういう働き方なら一番力を発揮できるのか。

それを理解していることです。

自分の容量を知らなければ、引き受けられるかどうかも正しく判断できません。

仕事の管理とは、タスクを管理することだけではなく、その仕事をする自分自身を管理することでもあるのです。

有能な人は、何でも引き受ける人ではない

頼まれた仕事をすぐやることは、決して悪いことではありません。

すぐ終わる仕事なら、その場で片づけた方がいいこともあります。

困っている人がいれば、予定を変えてでも助けるべき場面もあります。

大切なのは、

「頼まれたから、すぐやる」

を自動的な反応にしないことです。

今、自分は何を抱えているのか。

この仕事を引き受けても、約束した仕事を終わらせられるのか。

本当に今、自分がやるべきなのか。

そこまで考えてから、引き受ける。

有能な人とは、何でも引き受ける人ではありません。

自分にできることを見極め、引き受けた仕事をきちんとやり遂げられる人です。

何でも「できます」と言えることより、自分の「できる」と「できない」を正しく知っていること。

それもまた、仕事における「己を知る」ということなのだと思います。


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