最後にスマホで電話をかけたのは、いつでしょうか。
昨日でしょうか。それとも、数日前?
では、最後にスマホを触ったのは?
おそらく、この記事を読む直前にも使っていたのではないでしょうか。
もしかすると、この記事をスマホで読んでいただけているかもしれません。
ニュースを読む。動画を見る。写真を撮る。買い物をする。友人にメッセージを送る。
今では、電話をかけなくても、スマホを使わない日はないという人もいるでしょう。
考えてみると、不思議な話です。
電話なのに、電話以外のことばかりしている。
いったい、いつから電話は、こんな存在になったのでしょうか。
その歴史を振り返ってみると、実は一つの企業がスマホを変えたわけではないことが分かります。
電話にカメラをつけたら、何が変わった?
2000年。
シャープが開発したカメラ付き携帯電話「J-SH04」が、J-フォンから発売されました。
この携帯電話には、11万画素のカメラが搭載され、撮影した写真をメールで送信できる機能がありました。
現在では当たり前のように使われている機能ですが、当時の携帯電話にとっては、大きな変化でした。
それまで、写真を撮るためにはカメラを持ち歩く必要がありました。
ところが、携帯電話にカメラがついたことで、いつでも写真を撮れるようになりました。
さらに、撮影した写真をその場で送信できるようになったのです。
旅行先で見つけた面白いもの。
偶然出会った景色。
友人と過ごした何気ない時間。
わざわざカメラを持って行かなくても、携帯電話さえあれば撮影できる。
しかも、その写真を離れた場所にいる人と共有できる。
電話は、声だけでなく、目の前の景色まで届けられる道具になりました。
今度は、財布まで携帯電話に入った
2004年。
NTTドコモが「おサイフケータイ」のサービスを開始しました。
対応する携帯電話を使って、電子マネーなどのサービスを利用できる仕組みです。
同年12月には、対応端末が全国で100万台を突破しました。
電話をかけるために持ち歩いていたものが、買い物の支払いにも使えるようになったのです。
ここで注目したいのは、携帯電話に新しい機能が追加されたことだけではありません。
それまで財布やカードが担っていた役割の一部を、携帯電話が引き受け始めたことです。
写真を撮るためのカメラ。
支払いをするための財布。
別々だった道具の役割が、少しずつ携帯電話に集まっていきました。
では、なぜ現在のスマホは、さらに多くのことができるのでしょうか。
電話の使い方を、世界中の人が増やし始めた
2007年、Appleが初代iPhoneを発表しました。
翌2008年には、GoogleのAndroidを搭載した最初の商用スマートフォン「T-Mobile G1」も登場しました。
スマートフォンの歴史は、この2つの製品から始まったわけではありません。
それ以前にも、さまざまな企業がスマートフォンを開発していました。
しかし、iPhoneやAndroid端末の登場は、スマートフォンの使い方が広がる重要な転換点の一つになりました。
特に注目したいのが、アプリです。
2008年、AppleはApp Storeを開始。
Googleも、Android向けのアプリを提供するAndroid Marketを開始しました。
App Storeでは、開始時点で500本以上のアプリが提供され、最初の週末だけでダウンロード数が1,000万本を突破しました。
ここで重要なのは、アプリの数だけではありません。
端末を製造する企業だけでなく、さまざまな企業や開発者が、スマホ向けのアプリを提供できる環境が広がっていったことです。
例えば、地図を見たい人は地図アプリを使う。
音楽を聴きたい人は音楽アプリを使う。
ゲームを楽しみたい人はゲームアプリを使う。
利用者は、自分が必要とする機能を選べるようになりました。
同じスマホを持っていても、使う人によって中身が違う。
電話の使い方を、電話をつくった会社だけが決める必要はなくなったのです。
なぜ、企業はスマホに機能を追加するのか
ここで、少し視点を変えてみます。
これまでは、携帯電話にどんな機能が追加されたのかを紹介してきました。
しかし、考えてみると不思議です。
なぜ、これほど多くの企業がスマホ向けのサービスを提供するのでしょうか。
例えば、銀行です。
以前は、残高を確認したり振り込みをしたりするために、ATMやパソコンを利用することが一般的でした。
しかし現在では、多くの銀行がスマホ向けのアプリを提供しています。
買い物も同じです。
店舗やパソコンで利用していたサービスが、スマホからも利用できるようになりました。
もちろん、企業によって事情は異なります。
それでも、スマホ向けのサービスが広がった理由の一つとして、利用者がすでにスマホを持ち歩いていることが挙げられます。
企業が新しい専用端末を開発しなくても、利用者が持っているスマホを通じてサービスを提供できるのです。
そして、スマホで利用できるサービスが増えれば、利用者にとってもスマホの魅力が高まります。
スマホが便利になるから、人が集まる。
人が集まるから、企業が新しい機能を追加する。
機能が増えることで、さらに便利になる。
こうした循環によって、スマホは電話以外の役割を次々と増やしてきたと考えられます。
ただし、すべてのサービスがスマホ中心になったわけではありません。
仕事の内容や利用者によっては、パソコンや専用端末の方が適している場合もあります。
それでも、スマホが多くの企業にとって重要なサービス提供の場になったことは、これまでの変化からも読み取れます。
新しいサービスは、どこにつくる?
スマホが便利になるから、人が集まる。
人が集まるから、企業が新しい機能を追加する。
この循環は、私たちが新しいサービスを考えるときにも、ヒントになるのではないでしょうか。
新しいサービスをつくろうとすると、何をつくるか、どんな機能を追加するかを考えます。
もちろん、それは大切です。
しかし、どれほど便利なサービスでも、利用してくれる人がいなければ広がりません。
一方、すでに多くの人が利用している場所なら、新しいサービスを知ってもらう機会も生まれます。
例えば、駅です。
駅は本来、電車に乗り降りする場所ですが、現在ではコンビニや飲食店、書店など、さまざまな店舗が設けられています。
さらに、JR東日本は、駅構内などで個室型のワークスペース「STATION BOOTH」を展開しています。
例えば、目白駅では改札内に個室型のワークスペースが設置されており、移動の合間などに仕事ができるようになっています。
電車に乗るために人が集まる場所が、買い物をしたり、食事をしたり、仕事をしたりする場所にもなっているのです。
新しく人を集めるのではなく、すでに人が集まっている場所で、新しいサービスを提供する。
これは、スマホにも共通する考え方ではないでしょうか。
スマホに機能が集まったのではなく、人が集まった場所に、企業が機能を追加していったのではないか?
もちろん、実際には新しい機能が生まれたからこそ、スマホを利用する人も増えました。
人が集まることと、機能が増えること。
その両方が、スマホの進化を支えてきたように感じます。
新しいサービスをつくるとき、私たちは何をつくるかだけでなく、人がすでに集まっている場所をまずは探してみるのはどうでしょうか?
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
参考・出典
本記事の歴史的な事実や企業の取り組みについては、以下の公式資料を参考にしました。
1.シャープ:
2.NTTドコモ:
「iモード FeliCa サービスを開始」2004年6月16日
「おサイフケータイ対応携帯電話が全国で100万台突破」2004年12月15日
3.Apple
「App Storeのダウンロード数、最初の週末で1千万本を突破」2008年7月
4.Google
「Celebrating a Sweet Decade of Android」2018年10月
5.JR東日本
