マイケル・ジャクソンと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
ムーンウォーク。
世界でもっとも売れたアルバムとして知られる『Thriller』。
そして、「キング・オブ・ポップ」と呼ばれた圧倒的なスター性。
音楽に詳しくない人でも、その名前を知らない人はほとんどいないでしょう。
しかし、そんなマイケル・ジャクソンに、あまり知られていない記録があります。
39。
これは、彼が支援していた慈善団体の数です。
ギネス世界記録には、2000年時点でマイケル・ジャクソンが39の慈善団体を支援していたことが記録されています。
世界でもっとも有名なスターの一人は、なぜこれほどまで「人を助けること」に力を注いだのでしょうか。
支援していたのは、一つの分野だけではなかった
39という数字だけでも驚きます。
しかし、さらに興味深いのは、その中身です。
マイケルが支援していた団体を見ると、その活動は一つの分野に限られていません。
たとえば、がん患者への支援を行うAmerican Cancer Society。
難病と闘う子どもたちの願いをかなえるMake-A-Wish Foundation。
AIDSに関する支援活動を行うElizabeth Taylor AIDS Foundation。
アフリカ系アメリカ人の学生の教育を支援するUnited Negro College Fund。
ほかにも、子ども、医療、教育、貧困、病気など、支援先はさまざまな分野に広がっていました。
つまりマイケルは、
「この問題だけを支援する」
という活動をしていたわけではありません。
困っている人がいるさまざまな場所へ、支援を広げていたのです。
お金を寄付するだけではなかった
慈善活動と聞くと、
「お金を寄付したのだろう」
と思うかもしれません。
もちろん、マイケルは多額の寄付を行っています。
しかし、彼が使ったのはお金だけではありませんでした。
自分の音楽。
コンサート。
知名度。
そして、世界中の人を動かすことのできる影響力。
自分が持っているものを、さまざまな形で慈善活動に使いました。
その象徴的な活動の一つが、1992年に設立したHeal the World Foundationです。
その名前には、彼の代表曲「Heal the World」と同じ言葉が使われています。
「世界を癒やそう」。
彼にとって、人を助けるということは、音楽とはまったく別の活動ではなかったのかもしれません。
自分の音楽で伝えること。
自分のお金で支えること。
自分の知名度によって人々の関心を集めること。
スターとして手にしたものを、そのまま支援する力に変えていったのです。
39という数字が示しているもの
一度、大きな金額を寄付する。
それだけでも簡単なことではありません。
しかし、「39の慈善団体を支援した」という記録から見えてくるのは、それとは少し違う姿です。
病気に苦しむ人がいる。
教育を受けられない人がいる。
貧困に苦しむ人がいる。
助けを必要としている子どもがいる。
そのたびに、自分にできることを考える。
一つの問題だけではなく、さまざまな問題に目を向け続ける。
39という数字は、「一度いいことをした人」の数字ではありません。
人を助けるという行動を、何度も繰り返してきたからこそ生まれた数字です。
世界的スターたちと作った「We Are the World」
その姿勢が世界規模で形になった出来事の一つが、1985年の「We Are the World」でした。
アフリカの飢餓救済を目的として始まったこのプロジェクトで、マイケルはライオネル・リッチーとともに楽曲を制作しました。
レコーディングには、スティーヴィー・ワンダー、ボブ・ディラン、ダイアナ・ロス、ブルース・スプリングスティーン、レイ・チャールズなど、約45人ものトップアーティストが参加。
世界を代表するスターたちが、一つの目的のために力を合わせました。
「We Are the World」は世界的なヒットとなり、そこから生まれた資金はアフリカへの支援に使われました。
ただし、これはマイケル一人のプロジェクトではありません。
ハリー・ベラフォンテの発案から始まり、多くの関係者とアーティストによって実現したものです。
そして重要なのは、マイケルの人道支援が、この一曲だけで終わらなかったことです。
「We Are the World」は、彼が続けてきた数多くの活動の一つだったのです。
なぜ、そこまで人を助けようとしたのか
では、なぜマイケル・ジャクソンは、そこまで人を助けることにこだわったのでしょうか。
その理由を一つに決めることはできません。
しかし、彼が残した作品を見ていくと、繰り返し登場するテーマがあります。
「Heal the World」。
「Man in the Mirror」。
「Earth Song」。
そこに描かれているのは、自分自身の成功だけではありません。
世界。
貧困。
環境。
子どもたち。
そして、自分たちに何ができるのか。
なかでも「Man in the Mirror」が伝えている考え方は象徴的です。
世界を変えたいのであれば、まず自分自身から変えていく。
マイケルは、そうしたメッセージを歌にして世界へ届けるだけでなく、慈善活動という形でも行動に移していました。
だからこそ39という数字は、彼の作品とまったく別のところに存在する数字ではないように思えます。
歌っていたことと、実際にやっていたことが、つながっている。
そこに、マイケル・ジャクソンという人物の一つの側面が見えてきます。
成功したあと、その力を何に使うのか
私たちはよく、
「どうすれば成功できるのか」
を考えます。
どうすればもっと稼げるのか。
どうすれば有名になれるのか。
どうすれば大きな会社をつくれるのか。
もちろん、それを目指すことは悪いことではありません。
しかし、マイケル・ジャクソンの39という数字を見ていると、その先にもう一つの問いがあることに気づきます。
「成功して手に入れたものを、何のために使うのか。」
マイケルには、お金がありました。
世界的な知名度がありました。
何億人もの人へ届けられる音楽がありました。
そして彼は、それらの一部を自分以外の誰かのために使いました。
だからといって、私たちが39の慈善団体を支援する必要はありません。
そもそも、持っているものが違います。
お金がある人なら、お金を使えるかもしれない。
知識がある人なら、知識を伝えられる。
人とのつながりがある人なら、誰かと誰かを結びつけられる。
経験がある人なら、困っている人にその経験を伝えられる。
そして特別なものがなくても、誰かのために少し時間を使うことはできます。
大切なのは、自分が持っているものの中に、誰かのために使えるものはないかと考えること。
なのかもしれません。
人物のすべてを肯定しなくても、学べることはある
もちろん、マイケル・ジャクソンという人物を語るうえで、触れずに済ませられないこともあります。
彼には生前から児童への性的虐待をめぐる深刻な疑惑があり、現在もその評価は大きく分かれています。
2005年の刑事裁判ではすべての訴因について無罪評決となりましたが、その後も疑惑や議論そのものがなくなったわけではありません。
この記事は、マイケル・ジャクソンという人物のすべてを肯定するものではありません。
しかし同時に、長年にわたって多くの慈善活動を支援してきたという記録も残っています。
人間は、一つの面だけで語れるものではありません。
だからこそ、
その人物を丸ごと肯定することと、その人物が残した行動から何かを学ぶことは、分けて考えてもいいのではないでしょうか。
「何を持っているか」より、「何に使ったか」
世界的な成功。
莫大な富。
圧倒的な知名度。
マイケル・ジャクソンは、多くのものを手にしました。
しかし今回注目したいのは、手に入れたものの大きさではありません。
それを何に使ったのか。
39の慈善団体。
その数字の向こうには、病気と闘う人、教育を必要としている人、貧困に苦しむ人、助けを必要としている子どもたちがいました。
一流とは、どれだけ多くのものを手に入れたかだけで決まるものではないのかもしれません。
手に入れたものを、誰のために使ったのか。
そこにも、その人の生き方は表れます。
私たちが持っているものは、マイケル・ジャクソンとは比べものにならないほど小さいかもしれません。
それでも、
「自分が持っているものの中で、誰かのために使えるものは何だろう。」
そう考えることなら、今日からできます。
マイケル・ジャクソンが残した「39」という数字は、そんな問いを私たちに投げかけているのかもしれません。
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
参考・出典
・Guinness World Records|Most charities supported by a pop star
・Los Angeles Times|Jackson Acquitted on All 10 Counts
・The Chronicle of Philanthropy|Michael Jackson and Philanthropy
