部下や後輩に仕事を教えていて、
「ちゃんと説明したのに、なぜ伝わらないんだろう」
と思ったことはないでしょうか。
反対に、丁寧に説明しているつもりなのに、
「そこはもう分かっています」
という反応をされることもあります。
説明が足りなければ伝わらない。
でも、知っていることまで一から説明されると、
今度は話が長く感じます。
説明は、丁寧にすればするほど伝わるとは限りません。
では、何を基準に説明すればいいのでしょうか。
自分には当たり前でも、相手には初めてかもしれない
仕事に慣れてくると、
説明しなくても分かることが増えていきます。
たとえば、
「この資料、いつものフォルダに入れておいて」
「前回と同じように処理しておいて」
何度も一緒に仕事をしている相手なら、これだけで通じます。
でも、初めてその仕事を担当する人には、
「いつものフォルダ」がどこなのか。
「前回と同じ」が何を指すのか。
そこから分からないこともあります。
説明する側からすると、
「そこまで言わなくても分かるだろう」
と思うようなことでも、
相手にとっては初めて聞く話かもしれません。
今では何も考えずにできる仕事も、
最初からできたわけではないはずです。
誰かに聞いたり、
一度間違えたり、
何度も繰り返したりしながら、
少しずつできるようになっていった。
ところが、できるようになると、
自分がどこでつまずいていたのかを忘れてしまいます。
一度知ってしまうと、「知らない側」に戻るのは難しい
こうしたことに関係する考え方として、
「知識の呪い」と呼ばれるものがあります。
一度知ったことを、
「自分はまだ知らない」と仮定して考えるのは難しい。
そんな現象です。
仕事でも同じことがあります。
何年も続けている業務なら、
「これは知っているだろう」
「ここは説明しなくても大丈夫だろう」
と考えてしまいます。
でも、
自分にとって当たり前になっていることと、
相手にとって当たり前になっていることは、
必ずしも同じではありません。
ここを間違えると、
説明する側は十分に話したつもりなのに、
相手には肝心な部分が伝わっていない。
そんなことが起こります。
だからといって、全部説明すればいいわけでもない
では、分からない可能性があるなら、
最初から全部説明すればいいのでしょうか。
それも違います。
すでに何度も経験している仕事を、
毎回一から説明されたら、
「そこはもう分かっています」
と思うはずです。
部下や後輩だからといって、
いつまでも同じ場所にいるわけではありません。
昨日まで確認が必要だった仕事を、
今日は一人で進められるようになっていることもあります。
つまり、
相手が成長すれば、必要な説明も変わります。
今回の仕事で、どこまで分かっているのかを見る
では、説明するときに何を見ればいいのでしょうか。
大切なのは、
相手が今回の仕事について、どこまで分かっているのかを見ることです。
たとえば、後輩に資料作成をお願いするとします。
数字を集める作業には慣れている。
でも、
その数字をどの順番で見せるのか。
どこを強調すれば伝わりやすいのか。
そこはまだ経験が少ない。
そんな場合、
Excelの使い方から説明する必要はありません。
一方で、
「いつも通り資料にしておいて」
だけでは足りないかもしれません。
つまり、
説明するときに見るべきなのは、
その人が何をできるかだけではなく、今回の仕事の中で、どこまでは理解していて、どこから説明が必要になるのか。
そこを見極めることです。
同じ人でも、
仕事の内容が変われば、
説明が必要になる場所も変わります。
説明が必要な場所は、相手の成長と一緒に変わる
そして大切なのは、
その場所がずっと同じではないということです。
最初は、
資料の作り方まで説明していた人が、
しばらくすると一人で作れるようになる。
その次は、
「どう見せれば伝わるか」
という部分だけ説明すればよくなるかもしれません。
さらに経験を積めば、
そこも任せられるようになります。
だから、
昨日と同じ説明が、
今日もちょうどいいとは限りません。
相手が成長すれば、説明が必要な場所も変わっていきます。
普段から相手を見ているから、説明する場所が分かる
相手がどこまで理解しているのか。
それは、
説明する瞬間だけでは分からないこともあります。
普段の仕事の中で、
どんな業務を経験してきたのか。
何なら一人で進められるのか。
どこでは確認することが多いのか。
以前教えたことを、今はどこまでできるようになっているのか。
そうした変化を見ていれば、
「ここはもう説明しなくても大丈夫そうだ」
「ここからは少し丁寧に話した方がよさそうだ」
と判断しやすくなります。
説明がうまい人というと、
話し方が上手な人を思い浮かべます。
でも実際には、
普段から相手を見ていることも、分かりやすい説明につながっています。
それでも、決めつけない
もちろん、
普段から相手を見ていても、
こちらの想像がいつも当たるとは限りません。
「この仕事は経験しているから大丈夫だろう」
と思っていても、
今回だけ初めての作業が入っているかもしれません。
逆に、
経験が浅いと思っていた人が、
自分で調べて理解していることもあります。
だから、
こちらだけで相手の理解度を決めないことも大切です。
これまでどこまで経験しているのかを聞いたり、
話しているときの反応を見たりしながら、
必要な説明を調整していく。
そうすれば、
「分かっていることを延々と説明される」
ことも、
「分からないまま話が先に進む」
ことも減っていきます。
説明がうまい人は、「どこから話すか」を見極めている
ここまで考えると、
説明がうまい人は、
誰に対しても同じように詳しく話す人ではありません。
相手の
「知っていること」と「知らないこと」
その境界線を見つけて、
どこから説明が必要なのかを見極めている人です。
その境界線は、人によって違います。
同じ人でも、
仕事の内容や経験によって変わります。
だから、
部下や後輩に説明するときに考えたいのは、
「どう話せば分かりやすいか」だけではありません。
この人は、今回の仕事をどこまで理解しているのか。
そこを見ることです。
説明上手とは、
たくさん話せる人ではありません。
相手の今を見て、必要なところから話せる人。
それが、本当の意味で説明がうまい人なのではないでしょうか。
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
