星野リゾートに学ぶ|猛暑を商機に変える経営戦略

2026年の夏も、厳しい暑さが続いています。

暑くなれば、できるだけ涼しい場所にいたくなりますよね。

実際、旅行先の選び方にも変化が起きています。

旅行予約サイトAgodaが発表した2026年夏の宿泊検索データでは、涼しい気候や豊かな自然を楽しめる地域への関心が大きく伸びました。

特に伸びたのが、

  • 蓼科高原 277%増
  • 富良野 229%増
  • 湯沢 202%増
  • 軽井沢 161%増
  • 松本・上高地 133%増

というエリアです。

暑さを避けて涼しい場所で休暇を過ごす、いわゆる「クールケーション」への関心が高まっています。

しかし、ここで一つ疑問が浮かびます。

「涼しいだけなら、家でエアコンをつけていればいい」のでは?

自宅でエアコンをつけて過ごせば、わざわざ交通費や宿泊費を払う必要はありません。

「涼しさ」だけを求めるなら、その方が合理的でしょう。

それでも、人は旅行へ出かけます。

なぜでしょうか。

そこに、今回考えたい「売れる商品」のヒントがあります。

星野リゾートが始めた「リゾート涼旅」

この夏、星野リゾートの「リゾナーレ」は、

酷暑ストレス解消!「リゾート涼旅」

という企画を展開しています。

その考え方が、とても興味深いものです。

単に、

「涼しい場所へ旅行しませんか」

と訴求しているわけではありません。

星野リゾートが打ち出しているのは、避暑に加えて、その土地ならではの自然や文化を楽しむ体験です。

たとえば、リゾナーレトマム。

標高1,088メートルの「雲海テラス」で、爽やかな朝の空気を感じながら雲海を眺める。

リゾナーレ八ヶ岳では、標高約1,000メートルの高原で「八ヶ岳マルシェ2026」を開催。

地元の生産者と触れ合いながら夏野菜を味わったり、「トマトのかき氷」や「丸ごと野菜のスムージー」を楽しんだりできます。

リゾナーレ那須では、田園風景の中でクラフトビールや夏野菜を楽しむ「田んぼビアガーデン」。

つまり、提供しているのは、

「涼しい場所」だけではありません。

「夏を楽しみたい。でも、暑いのは嫌だ」

ここに、星野リゾートの戦略を考えるうえで重要なポイントがあります。

夏休みになれば、

「どこかへ出かけたい」

「家族と思い出をつくりたい」

「普段とは違う場所で過ごしたい」

と思う人は少なくないでしょう。

でも、近年の猛暑では、

「暑いところには行きたくない」

という気持ちも生まれます。

つまり、お客様の中には二つの気持ちがあります。

夏を楽しみたい。

でも、暑いのは嫌だ。

一見すると、矛盾しています。

しかし、商品やサービスのヒントは、こうした矛盾の中にあるのかもしれません。

「暑いから外出するのをやめましょう」

ではなく、

「涼しい場所で、夏を思い切り楽しみましょう」

という答えをつくる。

「リゾート涼旅」の面白さは、ここにあります。

売っているのは「涼しさ」ではない

もし星野リゾートが売っているものが単なる「涼しさ」なら、自宅のエアコンも競合になります。

しかし、実際に提供している価値を考えてみると、少し違います。

涼しい高原で、家族と過ごす。

爽やかな朝の空気の中で、雲海を見る。

高原の野菜を食べ、その土地ならではの夏を楽しむ。

つまり、

「暑さを我慢せずに、夏を楽しめる体験」

を売っているのです。

だからこそ、「家でエアコンをつけていればいい」とはならない。

ここに、商品を考えるうえで大切な視点があります。

「やりたい」を残したまま、「嫌だ」を取り除く

企業は、お客様の不満を解決しようとします。

もちろん、それ自体は間違いではありません。

しかし、不満をなくすことだけを考えると、

「暑いなら外へ出なければいい」

という答えにもなります。

それでは、お客様が本来持っていた、

「夏を楽しみたい」

という欲求まで消えてしまいます。

そこで考えたいのが、

「やりたい」を残したまま、「嫌だ」だけを取り除けないか。

ということです。

たとえば、

「美味しいものを食べたい。でも太りたくない」

「旅行したい。でも計画するのは面倒」

「仕事を効率化したい。でも難しいシステムは使いたくない」

私たちの生活には、

「〇〇したい。でも△△は嫌だ」

がたくさんあります。

企業から見れば、「でも」の前にあるのがお客様の欲求です。

そして、「でも」の後ろにあるのが、それを邪魔している不満や不安です。

この二つを同時に見ると、

「何を売るか」ではなく、「どんな矛盾を解決するか」

という発想が生まれます。

猛暑そのものは変えられない。でも、お客様への答えは変えられる

企業が猛暑そのものを止めることはできません。

しかし、環境が変われば、人の気持ちや行動も変わります。

以前なら、

「夏だから旅行へ行こう」

だったものが、

「旅行には行きたい。でも暑い場所は避けたい」

へ変わる。

その変化に気づけば、企業が提供すべき価値も変わってきます。

星野リゾートの「リゾート涼旅」は、猛暑そのものを解決しているわけではありません。

変化したお客様の気持ちに対して、

「それなら、こんな夏の楽しみ方があります」

と新しい答えを提示しています。

環境の変化は、企業にとって逆風になることがあります。

でも同時に、

これまでになかったニーズが生まれる瞬間

でもあるのかもしれません。

あなたのお客様の「でも」は何ですか?

新しい商品やサービスを考えるとき、

「何を売ろう?」

から始めることが多いかもしれません。

しかし、ときには、

お客様は、本当は何をしたいのか。

そして、

それを邪魔している「嫌なこと」は何なのか。

そこから考えてみる。

「〇〇したい。でも△△は嫌だ。」

その「でも」の後ろにあるものを取り除けたとき、

お客様が本当に欲しかったものが、もっと見えてくるかもしれません。

2026年の暑い夏。

星野リゾートの「リゾート涼旅」を見ていると、

環境が変わったときこそ、お客様の中に生まれた新しい「でも」を探してみる。

そんなところに、変化を商機へ変えるヒントがあるように思います。

以上

「一流の思考ラボ」でした。


参考資料・出典


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