「機嫌がいい人」は、なぜ仕事でも信頼されるのか|感情に振り回されない人の考え方

仕事をしていると、こんな人に出会うことがあります。

忙しいのに、いつ話しかけても態度が大きく変わらない人。

トラブルが起きても、周囲にイライラをぶつけない人。

反対に、

「今日は機嫌が悪そうだから、あとにしよう」

と、話しかけるタイミングを考えなければならない人もいます。

仕事の能力とは直接関係がないように見える「機嫌」。

でも実は、仕事における信頼を考えるうえで、無視できないものなのかもしれません。

感情は、自分だけのものではない

「機嫌くらい、自分の問題でしょう」

そう思うかもしれません。

ところが、職場ではそうとも言い切れません。

心理学や組織行動の研究では、ある人の感情や気分が周囲に伝わっていく「感情伝染(emotional contagion)」という現象が研究されています。

研究者のシガル・バーセード氏は、集団の中で感情がどのように伝わるのかを実験しました。

その結果、ポジティブな感情が伝わったグループでは、協力が増え、対立が減り、仕事の成果についての自己評価も高くなる傾向が確認されました。

つまり、

自分の機嫌は、自分だけで完結していない。

職場では、一人の感情が周囲の仕事のしやすさにまで影響する可能性があるのです。

リーダーの『機嫌』は、チームにも伝わる

興味深い研究があります。

リーダーの気分が、チームにどのような影響を与えるのかを調べた研究です。

リーダーがポジティブな気分だった場合、メンバーもよりポジティブな気分になり、チーム全体の雰囲気にも影響が見られました。

つまり、周囲への影響力が大きい人ほど、自分の機嫌は「自分だけの問題」ではなくなっていく可能性があります。

これは経営者や管理職だけの話ではありません。

先輩と後輩。

取引先と担当者。

店長とスタッフ。

家庭なら、親と子ども。

自分では「今日はちょっと機嫌が悪いだけ」と思っていても、その空気を周囲は意外と敏感に感じ取っているのかもしれません。

信頼されるのは、「いつも笑顔の人」ではない

では、いつもニコニコしていればいいのでしょうか。

私は、そうではないと思います。

嫌なことがあれば腹も立ちます。

失敗すれば落ち込みます。

忙しければ余裕がなくなる日だってあります。

感情をなくすことはできませんし、無理に笑顔をつくる必要もありません。

大切なのは、

「感情があること」と「その感情を周囲にそのまま渡すこと」を分けて考えること。

ではないでしょうか。

イライラしているから、部下への言葉が強くなる。

プライベートで嫌なことがあったから、同僚への返事が冷たくなる。

仕事がうまくいかないから、家族に当たってしまう。

本人にとっては一時的な感情でも、受け取る側には関係ありません。

「今日は話しかけても大丈夫かな」と思わせない

仕事で信頼される人について考えてみると、一つの共通点が見えてきます。

それは、

反応がある程度予測できること。

同じ質問をしたのに、昨日は普通に答えてくれたのに今日は怒られる。

忙しい日は極端に態度が変わる。

何かを相談するたびに、相手の顔色を読まなければならない。

こうした状態が続くと、周囲は仕事内容より先に、

「今日は機嫌がいいかな」

と考えるようになります。

すると、小さな相談が遅れます。

報告をためらいます。

悪い情報ほど伝わりにくくなります。

これは組織にとって、決して小さな問題ではありません。

逆に、

「この人なら、まず話を聞いてくれる」

と思える人には、良い情報も悪い情報も集まりやすくなります。

信頼とは、「いつも優しい」ということだけではありません。

安心して情報を渡せることも、信頼の一つなのではないでしょうか。

「任せる」と「丸投げ」は違う

では、感情に振り回されないためにはどうすればいいのでしょうか。

私は、「いつも機嫌よくいよう」と頑張る必要はないと思います。

それよりも、

自分の機嫌を他人任せにしない。

こちらの方が大切です。

誰かが褒めてくれたから機嫌がいい。

思い通りに仕事が進んだから機嫌がいい。

部下が期待通りに動かなかったから機嫌が悪い。

これでは、自分の感情を周囲に預けていることになります。

ここで、ふと思いました。

これは仕事にも少し似ているのではないでしょうか。

仕事は、一人ですべて抱える必要はありません。

むしろ、自分がきちんと内容を理解したうえで、信頼できる人に適切に任せることは大切です。

でも、

自分ではよく分かっていない。

とりあえず誰かに任せる。

うまくいかなければ、その人のせいにする。

それでは「任せる」というより、「丸投げ」に近いのではないでしょうか。

機嫌も同じなのかもしれません。

誰かに話を聞いてもらう。

助けてもらう。

元気をもらう。

人の力を借りることは、決して悪いことではありません。

むしろ、一人で抱え込まず、人を頼ることが必要なときもあります。

でも、

「あの人のせいで機嫌が悪い」

「あの人がこうしてくれれば、私は機嫌よくいられる」

と考え始めると、自分の機嫌そのものを他人に丸投げすることになります。

人の力は借りても、自分の感情の責任までは預けない。

仕事と同じように、機嫌にもそんな「任せ方」が必要なのかもしれません。

「機嫌がいい人」が信頼される理由

能力が高い。

知識がある。

仕事が速い。

もちろん、どれも仕事では大切です。

でも、一緒に働く人が毎日接するのは、その人の能力だけではありません。

声のトーンや返事の仕方、トラブルが起きたときの反応、忙しいときの態度。

そんな小さなものも、毎日少しずつ積み重なっています。

だから「機嫌がいい人」が信頼されるのは、いつも楽しそうだからではないのかもしれません。

自分の感情の責任を、他人に取らせない。

その積み重ねが、

「この人とは安心して仕事ができる」

という信頼につながっていくのかもしれません。

以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。

参考・出典