「努力に勝る天才なし」|体操日本代表・橋本大輝さんを支えた言葉

「世界一になる人は、子どもの頃から特別だったのだろう」

スポーツの世界で圧倒的な結果を残した選手を見ると、そんなふうに思うことがあります。

幼い頃から誰よりも練習して。

最初から世界を目指していた。

そんな姿を想像するかもしれません。

しかし、体操日本代表の橋本大輝さんは、最初から世界を目指して体操を始めたわけではありませんでした。

そんな少年が後に、オリンピックの個人総合で金メダルを獲得。

世界選手権では個人総合3連覇を成し遂げるまでになります。

橋本さんが大切にしている言葉があります。

「努力に勝る天才なし」

世界一になった橋本さんの歩みをたどると、この言葉が単なる座右の銘ではないことが見えてきます。

最初から、オリンピックを目指していたわけではない

橋本さんが体操を始めたのは6歳。

きっかけは、先に体操をしていた2人のお兄さんでした。

最初から「オリンピックに出たい」という大きな夢を持っていたわけではありません。

本人が振り返っているように、当時の練習は週2回ほど。

転機が訪れたのは、小学4年生のときでした。

2012年のロンドンオリンピック。

テレビの向こうで、内村航平さんが男子個人総合の金メダルを獲得します。

その姿を見た橋本さんは、初めて、

「オリンピックに行きたい」

と思ったそうです。

最初から大きな夢があったのではなく、

続けている途中で、「こうなりたい」と思える人に出会った。

そこから橋本さんの目指す場所が変わっていきます。

憧れていた人を、初めて上回った日

高校1年生になると、橋本さんは初めてナショナルチームに選ばれます。

高校時代について本人は、通学に時間がかかり、学校では勉強をしなければ練習させてもらえない環境だったため、

「練習と勉強の繰り返しの毎日」

だったと振り返っています。

そして2021年。

東京オリンピックを前にした全日本体操種目別選手権の鉄棒で、橋本さんは優勝します。

その試合で橋本さんが上回った選手の一人が、

かつてテレビで見て憧れた内村航平さんでした。

そして同じ年の東京オリンピック。

橋本さんは男子個人総合で金メダルを獲得。

さらに、種目別鉄棒でも金メダルに輝きます。

小学4年生のときにテレビで見て、

「オリンピックに行きたい」

と思わせてくれた人。

その背中を追いかけた少年が、自らもオリンピックの舞台で世界一になったのです。

世界一になっても、難しい技に挑戦する

普通なら、ここで物語は終わりそうです。

夢だったオリンピックに出場した。

しかも金メダルを取った。

世界一になった。

もう十分です。

ところが橋本さんは、そこで止まりませんでした。

東京オリンピック後も、鉄棒にF難度の離れ技「リューキン」を取り入れるなど、演技の難度を上げることに取り組みます。

すでに世界一になった人が、

さらに難しいことを始めたのです。

橋本さんの座右の銘として紹介されているのが、

「努力に勝る天才なし」

という言葉です。

そして、かつて橋本さんが背中を追いかけた内村さんは、そんな橋本さんについて、

「世界一の練習をしてきた」

と評価しています。

世界一になっても、さらに上を目指して練習する。

橋本さんの座右の銘と実際の行動が、ここで重なります。

「世界一の練習をしないと世界一にはなれない」

2024年、パリオリンピックを控えた橋本さんは、こんな決意を語っています。

「世界一の練習をしないと世界一にはなれない。誰よりも練習したい」

すでに東京オリンピックで世界一になった選手の言葉です。

パリオリンピックでは、男子団体総合で金メダルを獲得。

一方、個人総合では6位となり、オリンピック連覇はなりませんでした。

しかし翌2025年。

世界選手権の男子個人総合で、橋本さんは再び世界一になります。

これで世界選手権の個人総合は3連覇。

男子では内村さん以来、史上2人目の快挙でした。

世界一になったあとも練習する。

思うような結果が出なくても、また練習する。

そして、もう一度世界一になる。

橋本さんの競技人生を見ると、

「努力に勝る天才なし」

という言葉の重みが、少し違って見えてきます。

相手の失敗ではなく、自分のベストで勝つ

橋本さんの考え方がよく表れている言葉が、もう一つあります。

東京オリンピック後のインタビューで、勝負についてこう語っています。

「ベストを出して、その上で勝つ。それが正真正銘のチャンピオンの姿」

相手が失敗してくれることを期待するのではない。

自分ができることを積み上げ、自分のベストを出して勝つ。

橋本さんが目を向けているのは、

自分で変えられる部分

なのかもしれません。

そのためにできることが、毎日の練習です。

今日、どれだけ取り組むか

「努力に勝る天才なし」。

世界一になった橋本さんが大切にしている言葉です。

橋本さんも、最初からオリンピックを目指して体操を始めたわけではありませんでした。

続けていくなかで、内村さんという憧れの存在に出会い、

「オリンピックに行きたい」

という目標が生まれました。

そして世界一になってからも、さらに難しい技に挑み、練習を続けています。

才能があるかどうか。

どんな環境に生まれるか。

どんな人と出会うか。

自分では選べないこともあります。

でも、

今日、どれだけ取り組むか。

そこには、自分で選べる部分があります。

最初から大きな夢を持っていなくてもいい。

続けている途中で、

「あの人のようになりたい」

と思える人に出会うこともあります。

そこから目標が生まれ、昨日より少しでも前へ進もうとする。

「努力に勝る天才なし」。

橋本大輝さんの歩みを知ると、この言葉がただの精神論ではなく、世界一になったあとも続いている姿勢として見えてきます。

以上

「一流の思考ラボ」編集長でした。


参考・出典


あわせて読みたい

▶4回転を跳ばなくても世界の頂点へ|坂本花織さんが磨き続けた「自分の武器」