自分よりすごい人を見ると、
「自分も、あんな風になりたい。」
と思うことはないでしょうか。
そして、その人に近づこうとすると、どうしても相手が持っているものに目が向きます。
営業がうまい人がいれば、営業力。
発信がうまい人がいれば、発信力。
会社なら、資金力や知名度、人材の多さ。
「あれが自分にもあれば」
そう思うのは、ごく自然なことです。
でも、本当に同じ武器を持たなければ、勝てないのでしょうか。
その問いを考えさせてくれる一人が、フィギュアスケートの坂本花織さんです。
4回転に挑戦した時期もあった
世界のトップ選手たちが、次々と高難度のジャンプに挑戦していく。
坂本さんも、その流れをただ眺めていたわけではありません。
4回転ジャンプを練習しました。
そして2020年には、実際の試合でも4回転に挑戦しています。
しかし、成功には至りませんでした。
当時の坂本さんは、4回転を意識するあまり、自分自身を見失っていた時期があったことも振り返っています。
だからといって、4回転への挑戦そのものを否定したわけではありません。
その後も練習を続けています。
ただ、世界で戦うために坂本さんが磨いていったものは、4回転だけではありませんでした。
自分がすでに持っている武器を、さらに磨く。
そこにも目を向けていきました。
北京では「相手のミス待ち」だった
2022年、北京オリンピック。
坂本さんは、4回転を演技構成に入れずに女子シングルを戦いました。
結果は、銅メダル。
オリンピックの表彰台です。
それだけを見れば、十分すぎるほどの結果に思えます。
しかし4年後、坂本さん自身は北京での戦いを振り返り、4回転を跳ぶ選手が多いなか、自分から勝ちにいくというより、上位選手のミスによってチャンスが生まれる「相手のミス待ち」のような状態だったと語っています。
世界で戦うために、自分には何が必要なのか。
坂本さんは北京からの4年間、自分のスケートをさらに磨いていきました。
スケーティングの質。
一つひとつの技の完成度。
そして、大きなミスなく演技をまとめる安定感。
4回転を取り入れなくても、自分が持っている武器をさらに磨くことで、勝つ可能性を大きくしていったのです。
4年後、自分の武器で勝負した
2026年。
ミラノ・コルティナ冬季オリンピック。
坂本さんは、この大会でも4回転を演技構成に入れていません。
それでも、女子シングルで銀メダルを獲得しました。
北京の銅から、一つ上の色へ。
坂本さんはこの4年間を振り返り、スケーティングのクオリティを高め、ノーミスを続けることで得点を底上げし、安定した成績につながったと語っています。
そして、こんな思いも口にしています。
大技ができなくても、クオリティを上げれば勝つチャンスがある。
同じように悩んでいる選手たちに、それを知ってもらえたらうれしい、と。
4回転に挑戦した。
でも、試合で成功させることはできなかった。
それでも、
「4回転がなければ勝てない」で終わらなかった。
自分にある武器を磨き、自分なりの戦い方をつくっていきました。
最後は、世界の頂点で
ミラノ・コルティナ五輪の約1か月後。
坂本さんは、現役最後となる世界選手権に出場しました。
ここでも、4回転は演技構成に入れていません。
そして最後の舞台で、
4度目の世界選手権優勝。
日本勢最多となる4度目の世界女王となり、競技人生を締めくくりました。
4回転に挑戦していた頃から、およそ6年。
できなかったことを、そのまま「自分に足りないもの」として追いかけ続けるだけでなく、自分がすでに持っている強みにも目を向け、それを世界で戦える武器へと磨いていった。
その先に、最後の世界一がありました。
できないことがあっても、勝つ道はつくれる
私たちも、
「これができないから無理だ」
と思ってしまうことがあります。
営業が苦手だから。
人前で話すのが苦手だから。
大きな会社のような資金力がないから。
もちろん、できないことに挑戦するのも大切です。
坂本さんも、4回転に挑戦しました。
だから、「苦手なことはやらなくていい」という話ではありません。
挑戦してみる。
それでも、うまくいかないことはある。
そんなとき、
「できないから無理だ」
で終わる必要はないのだと思います。
自分がすでに持っている武器に目を向ける。
そして、それをさらに磨いていく。
できないことがあっても、それだけで「勝てない」と決まるわけではない。
自分の武器を磨くことで、勝つ道はつくれる。
そんなことを、坂本花織さんから学んだ気がします。
もし今、
「自分には、あれができない」
と思っていることがあるなら。
そこで終わるのではなく、一度だけ考えてみてもいいのかもしれません。
「では、自分の武器は何だろう?」
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
参考資料・出典
- 日本オリンピック委員会(JOC)「自分超えを果たした銀メダル 4年間でメダルの輝きを増した世界女王のラストダンス(坂本花織)」
- 日本オリンピック委員会(JOC)「坂本花織、4度目優勝で有終の美 世界フィギュア、千葉百音『銀』」
- 日本オリンピック委員会(JOC)「坂本 花織|アスリート」
- スポニチ「フィギュア成年女子 坂本が優勝 転倒も…4回転跳んだ!『近いところまではいけている』」
- 日刊スポーツ「2位坂本苦笑『すっご、ははは』4回転成功の紀平に」
