「人は変われる」
そんな言葉を聞くことがあります。
私も、人は変われると思っています。
何歳になっても、新しいことを始めることはできる。
これまでとは違う考え方を持つこともできる。
長年続けてきた習慣だって、変えられるかもしれません。
でも同時に、こうも思います。
人が変わるというのは、そんなに簡単なことではない。
今まで当たり前だと思っていた考え方を変える。
何年、何十年と続けてきた習慣を変える。
自分が正しいと思ってきたことを、「もしかしたら違うかもしれない」と考えてみる。
そこにはきっと、それなりの理由が必要です。
そして、「今までとは違う自分になる」という覚悟も必要なのだと思います。
だから、自分を変えることは難しい。
では、他人を変えることはどうでしょうか。
「自分が変わった方が早い」
2026年9月19日、サンスポに興味深い記事が掲載されていました。
「にしたんクリニック」などを運営支援するエクスコムグローバルの西村誠司社長と、日本ハムの栗山英樹CBOの対談です。
テーマの一つになったのが、SNSでの誹謗中傷でした。
西村さん自身、「何なら僕は毎日、誹謗中傷を受けている」と話しています。
そんな西村さんが語った言葉が印象に残りました。
「誹謗中傷をするような人たちを変えるより、自分が変わった方が早い」
西村さんは、誹謗中傷する人について、「吐き口がないと自分のメンタルを保てない」と考え、「相手に言わせることで、その人たちを助けているんだ」と解釈するようにしているそうです。
もちろん、これは誰にでもできることではないと思います。
自分に向けられた厳しい言葉を見て、
「そういう考え方もある」
と簡単に受け流せるとは限りません。
実際、栗山さんも、さまざまなコメントを自分の中で処理したり、関係のないものには「知らん顔」をしたりしている一方、家族への言葉や人格否定については「心が動いてしまう。なかなか難しい」と率直に語っています。
一流の人だから、何を言われても平気なわけではない。
傷つくこともある。
それでも、自分の中でどう受け止めるかを考えている。
この対談を読んでいて、私はあることを考えました。
自分を変えるのも難しい。それでも
誹謗中傷を目にして傷ついていた人が、
「今日から気にしないようにしよう」
と決めたからといって、次の日から何も感じなくなるわけではありません。
受け止め方を変えることにも、時間がかかるでしょう。
では、自分ではなく、
誹謗中傷をしている人たちを変えようとしたらどうでしょうか。
一人なら、話し合うことができるかもしれません。
でも、10人いたら。
100人いたら。
その全員に考え方を変えてもらうには、一人ひとりに変わる理由が必要になります。
そして、一人ひとりが、
「自分も変わろう」
と思わなければなりません。
ここで、最初の話に戻ります。
人は変われる。
でも、人が変わるためには、それなりの理由と覚悟がいる。
それは自分だけではなく、他人だって同じです。
こちらがどれだけ「変わってほしい」と願っても、最後に変わるかどうかを決めるのは、その人自身です。
そう考えると、
自分を変えることも難しい。
でも、他人を変えることはもっと難しい。
西村さんの言葉が、少し違って見えてきました。
「相手が変われば解決する」と考えていないか
これは、誹謗中傷だけの話ではないと思います。
仕事でも、人間関係でも、
「もう少し相手が変わってくれたら」
と思うことがあります。
上司が、もう少し話を聞いてくれたら。
部下が、もう少し積極的に動いてくれたら。
お客さんが、商品の良さを分かってくれたら。
もちろん、相手に伝えることは大切です。
話し合うことで、相手が変わってくれることもあります。
だから、「他人を変えようとすることは無駄だ」と言いたいわけではありません。
ただ、
「相手が変わらない限り、この問題は解決しない」
と考えてしまうと、自分では動かせないものに、自分の状況を預けることになります。
そんなとき、
「どうすれば、この人を変えられるだろう」
ではなく、
「自分が変えられるものは何だろう」
と考えてみる。
伝え方を変える。
期待の仕方を変える。
受け止め方を変える。
付き合い方を変える。
場合によっては、距離を取る。
相手そのものを変えなくても、自分が選べることは意外とあるのかもしれません。
変わるかどうかを決められるのは、自分
ここで誤解したくないことがあります。
今回の西村さんの話は、
「誹謗中傷された側が変わればいい」
という話ではありません。
度を超えた誹謗中傷や人格否定まで、受けた側が我慢すればいいわけではない。
元の記事でも栗山さんは、「度を超えているのが問題」と話しています。
必要であれば、声を上げることも、誰かに助けを求めることも、適切な対応を取ることも大切です。
そのうえで考えたいのは、
自分にはコントロールできないものに苦しんでいるとき、自分の力をどこに使うか。
ということです。
人は変われる。
でも、変わるには理由がいる。
覚悟もいる。
それは、自分も他人も同じです。
だからこそ、誰かが変わってくれることを待ち続ける前に、
「自分に変えられるものはないだろうか」
と、一度だけ考えてみる。
それは、自分自身を丸ごと別の人間に変えることではありません。
伝え方かもしれない。
相手との距離かもしれない。
期待の仕方かもしれない。
あるいは、物事の受け止め方かもしれません。
どれも簡単に変えられるとは限りません。
それでも、自分がどうするかについては、自分で選ぶことができます。
他人を変えようとして疲れてしまったとき。
「相手をどう変えるか」ではなく、「自分自身が変われないか」と考えてみる。
他人が変わることを、問題が解決するための条件にしない。
それだけで、他人が変わるのを待つしかなかった問題に、別の解決方法が見えてくるかもしれません。
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
参考・出典
サンケイスポーツ「にしたんクリニック西村誠司社長『誹謗中傷をするような人たちを変えるより…』」(2026年9月19日)
