車、ロケット、街、そして火星都市|イーロン・マスクが見ている未来とは

車をつくる。

ロケットをつくる。

そして、街をつくる。

さらにその先には、

火星に、人が暮らせる都市をつくる。

一つひとつを見ると、まったく違う事業のように見えます。

けれど、イーロン・マスクが関わる代表的な事業を並べてみると、ある方向へ少しずつスケールが大きくなっているようにも見えてきます。

テスラでは、電気自動車。

SpaceXでは、ロケット。

そして現在、アメリカ・テキサス州には「Starbase(スターベース)」という街まで誕生しています。

さらにSpaceXがその先に掲げているのは、

火星に100万人以上が暮らす、自立した都市をつくること。

イーロン・マスクが描く世界は、なぜ車やロケットから、火星の都市にまで広がっているのでしょうか。

そこには、単に「大きなことをしたい」だけではない、もう一つの見方があるのかもしれません。

ロケットの拠点が、本当に「街」になった

Starbaseがあるのは、アメリカ・テキサス州南部です。

ここではSpaceXが、巨大宇宙船「Starship」の開発、製造、試験、打ち上げを行ってきました。

つまり、もともとは宇宙開発のための巨大な拠点です。

ところが2025年5月、この地域で住民投票が行われました。

問われたのは、

この地域を「Starbase」という一つの市にするかどうか。

結果は、賛成212票、反対6票。

ロケットをつくり、打ち上げていた場所が、本当に一つの「街」になったのです。

もちろん、Starbaseは火星につくられた街ではありません。

地球上にあるSpaceXの開発・製造・打ち上げ拠点です。

しかし、この街の存在を知ると、イーロン・マスクが考えている「宇宙開発」の見え方が少し変わってきます。

彼が目指しているのは、

ロケットを飛ばすことだけではないからです。

実は「車の次にロケット」ではなかった

ここで一つ、意外な事実があります。

イーロン・マスクというと、

「テスラで電気自動車を手がけ、その後、宇宙へ進んだ」

という印象を持つ人もいるかもしれません。

しかし、実際の時系列は違います。

マスクがSpaceXを設立したのは、2002年。

一方、テスラの取締役に就任したのは2004年です。

そして2008年にCEOとなりました。

つまり、

「車の次に宇宙へ向かった人」ではありません。

SpaceXでは、早くから人類が地球以外の惑星でも暮らせる未来を大きな目標として掲げてきました。

そう考えると、現在のStarshipやStarbaseも、

「ロケットをつくっていたら、その先に火星が見えてきた」

というより、

「人類が地球以外でも暮らせる未来を描き、そのために必要なものをつくっている」

と見ることもできます。

もちろん、テスラの事業まで「火星都市をつくるため」と考えることはできません。

しかし、少なくともSpaceXについては、

ロケットそのものではなく、その先にある未来を見ている。

ここが、とても興味深いところです。

火星へ「行く」ではなく、火星で「暮らす」

SpaceXが現在掲げている構想は、驚くほど壮大です。

火星に、自立した都市をつくる。

SpaceXによると、そのためには100万人以上の人々と、数百万トンもの物資を火星へ運ぶ必要があるとしています。

そこで必要になるのが、Starshipです。

SpaceXはStarshipを、人や大量の物資を地球軌道、月、火星、その先へ運ぶための再使用型輸送システムとして開発しています。

しかし、火星へ人を送り届ければ終わりではありません。

そこで人が暮らすとなれば、

電気がいる。

住む場所がいる。

水や資源がいる。

通信がいる。

移動手段がいる。

燃料も必要になります。

SpaceXは、火星に恒久的な生活拠点をつくるには、発電、資源採掘、燃料生産、建設、通信、輸送など、新たな産業が必要になるとしています。

つまり、

火星へ「行く」ことと、火星で「暮らす」ことは、まったく違う。

ロケットは、その未来を実現するための一つの手段にすぎないのです。

だから、ロケットを大量につくる

ここまで考えると、SpaceXがなぜ巨大なStarshipを開発しているのかも見えてきます。

一度だけ火星へ行くのであれば、何千機もの宇宙船は必要ありません。

しかし、100万人以上が暮らす都市をつくるとなれば話は別です。

人を運ぶ。

建設資材を運ぶ。

機械を運ぶ。

生活に必要な設備を運ぶ。

それを何度も繰り返さなければなりません。

SpaceXはStarbaseに「Starfactory」という製造拠点を設け、将来的には年間最大1,000機のStarshipを製造できる規模を想定しています。

数字だけを見ると、

「そんなにロケットをつくってどうするのだろう」

と思ってしまいます。

でも、目標が「ロケットを飛ばすこと」ではなく、

「火星に都市をつくること」

だと考えれば、意味が変わってきます。

ロケットは宇宙開発の主役であると同時に、

火星に街をつくるための巨大な物流手段

でもあるのです。

自動車会社が「街」を考える時代

ここで少しだけ、日本に目を向けてみます。

長く世界の自動車産業を牽引してきたトヨタも、現在はクルマだけを見ているわけではありません。

静岡県裾野市には「Toyota Woven City」があります。

トヨタはここを「モビリティのテストコース」と位置づけ、クルマだけでなく、人、モビリティ、インフラを一体として考えながら、未来の暮らしにつながる製品やサービスの実証を進めています。

2025年9月には、実際に住民の居住も始まりました。

かつてクルマをつくってきた会社が、

クルマの先にある「移動」を考え、

さらにその先にある「暮らし」や「街」まで考えるようになった。

そしてイーロン・マスクが見ている世界を追っていくと、そのスケールはさらに大きくなります。

車。

ロケット。

地球上の街。

そして、

火星の都市。

舞台は違います。

けれど、その先にあるものは、意外と似ているのかもしれません。

見ているのは「製品」ではなく、その先にある暮らし

私たちは企業を見るとき、

「何をつくっている会社なのか」

で考えることが多いと思います。

トヨタなら、クルマ。

テスラなら、電気自動車。

SpaceXなら、ロケット。

もちろん、それは間違っていません。

でも、一流の企業や経営者が見ているものは、もう少し先にあるのかもしれません。

その製品によって、人の暮らしをどう変えられるのか。

クルマそのものを見るのではなく、

人がどう移動するのかを見る。

ロケットそのものを見るのではなく、

人類がどこまで行けるのかを見る。

そして、その先で、

人がどこで、どう暮らすのかを見る。

そう考えると、車、ロケット、街、火星都市という、一見バラバラに見えるものにも一本の線が見えてきます。

壮大な「野望」の根底にあるもの

もちろん、本当に火星に100万人以上が暮らす都市ができるかどうかは、まだ誰にも分かりません。

技術、資金、安全性、資源。

越えなければならない壁は、数え切れないほどあります。

それでも、イーロン・マスクの構想を追っていて興味深いのは、

「今、何をつくれるか」ではなく、「どんな未来をつくりたいか」から考えているように見えることです。

火星に人が暮らせる未来を考える。

だから、そこから逆算して、今必要なものをつくる。

「火星に都市をつくる」と言葉にすると、あまりにも壮大です。

「野望」と呼びたくなるのも分かります。

けれど、その根底にあるものは、意外とシンプルなのかもしれません。

人が、よりよく暮らすためには何ができるだろう。

クルマも、

ロケットも、

街も、

そして火星都市も。

すべては、その問いに対する一つのアイデアだと考えることもできます。

世界を大きく変える人が見ているのは、自分たちが「何をつくるか」だけではなく、

その先で「人々の暮らしがどうなるか」なのかもしれません。

イーロン・マスクが見ている未来が、本当に実現するのか。

答えが分かるのは、まだずっと先でしょう。

ただ、火星都市という途方もない未来を本気で思い描く人がいて、

その未来から逆算して、今日も地球でロケットがつくられている。

そう考えると、

未来とは、いつか突然やってくるものではなく、

誰かが思い描いた「こうなったらいいな」を、今日一つずつ形にした先にあるものなのかもしれません。

以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。


参考・出典


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