日本茶と聞いて、どんな景色を思い浮かべるでしょうか。
急須。
畳。
静かな茶室。
どこか落ち着いた、少し格式のある世界を想像する人もいるかもしれません。
では、その日本茶に、
ストリート。
パンク。
遊び心。
を掛け合わせたら、どうなるでしょうか。
2026年9月12日、岡山県倉敷市児島に、日本茶と抹茶のティースタンド「BAKERU japanese tea stand」がオープンしました。
このお店を知って、私はある言葉が浮かびました。
「古き」と遊ぶ。
古いものを、そのまま残すのでもない。
古いものを捨てて、新しいものに置き換えるのでもない。
昔からあるものと遊びながら、その魅力を別の姿へと“化かしてみる”。
そこから、今までになかったものが生まれるのかもしれません。
「日本茶が化ける。」お茶屋
BAKERUがあるのは、倉敷市児島の「児島ジーンズストリート」。
運営するNEKKO株式会社が掲げているコンセプトは、
「日本茶が化ける。」
です。
日本茶には、長い歴史があります。
産地があり、職人がいて、茶師がいて、長い時間をかけて受け継がれてきた技術があります。
一方で、
「急須で淹れるもの」
「少し堅そう」
そんなイメージを持つ人もいるかもしれません。
そこでBAKERUが考えたのが、
日本茶そのものではなく、日本茶の“見え方”を化けさせること。
店では、抹茶アメリカーノや抹茶ラテなどが提供され、日本茶をストリートカジュアルに楽しめる世界観がつくられています。
そして、その組み合わせが面白いのです。
和とストリート。
伝統と実験。
静けさとパンク。
職人と遊び心。
普通なら、あまり一緒に並ばない言葉ばかりです。
でも、あえて混ぜてみる。
そこから、これまでとは違う日本茶の景色をつくろうとしています。
「明治のお茶屋が、今も続いていたら?」
BAKERUの店づくりには、面白い仮説があります。
それが、
「明治時代にあったお茶屋が現代にあったら、こんな店になっていただろう。」
というものです。
明治時代、日本には海外からさまざまな文化や技術が入ってきました。
でも、日本人はそれまでの文化をすべて捨てて、外国の文化に入れ替えたわけではありません。
新しく入ってきたものと、それまで日本にあったものが混ざり合い、そこから新しい生活や文化が生まれていきました。
BAKERUは、その「文明開化」の空気を現代の日本茶で表現しようとしています。
だから、昔の茶屋を忠実に再現するわけではありません。
店内にも、木だけではなく、ステンレスや鉄、コンクリートといった素材が使われています。
「昔のお茶屋を再現する」のではなく、「昔のお茶屋がそのまま2026年まで進化し続けていたら?」と想像してみる。
この発想が、とても面白いと思いました。
伝統は「触ってはいけないもの」なのか
伝統という言葉を聞くと、私たちはつい、
「変えてはいけないもの」
のように感じることがあります。
昔から続いてきたものだから、昔と同じ形で残す。
もちろん、それも伝統を守る大切な方法です。
でも、BAKERUを見ていると、別の向き合い方もあることに気づきます。
もっと自由に触ってみる。
意外なものと組み合わせてみる。
「こんなことをしたら面白くない?」と考えてみる。
つまり、
「古きものと遊ぶ」
という向き合い方です。
遊ぶというと、少し軽く聞こえるかもしれません。
でも、本当に自由に遊ぶためには、そのものが持っている魅力を知らなければなりません。
何が面白いのか。
なぜ長く残ってきたのか。
何を残したいのか。
それを知ったうえで、あえて今までとは違う組み合わせを試してみる。
だからこそ、単に伝統を壊すのとは違うのだと思います。
「反対のもの」を掛け合わせてみる
BAKERUが面白いのは、日本茶を単に「若者向け」にしたことではありません。
むしろ、
日本茶から一番遠そうなものを、あえて近づけている。
ここに面白さがあります。
静かな日本茶に、パンク。
伝統に、実験。
職人に、遊び心。
一見すると反対に見えるもの同士です。
でも、だからこそ、今までになかったものが生まれる。
これは、新しいアイデアを考えるときのヒントにもなりそうです。
似たものを足すだけではなく、
「これとは一番合わなそうなものは何だろう?」
と考えてみる。
そして、あえて掛け合わせてみる。
もちろん、すべてがうまくいくわけではありません。
でも、その少し乱暴なくらいの組み合わせから、思いもよらないものが生まれることがあります。
古きものは、もっと遊んでいいのかもしれない
BAKERUを運営するNEKKO株式会社は、地域づくりについて興味深い考え方を示しています。
地域にあるものを、ただ保存するのでもない。
観光のために、新しいものを外から持ってくるだけでもない。
その土地にある歴史や食、ものづくり、人といった「根っこ」に、現代の感性を掛け合わせる。
そして、
「その土地にあるものを、もう一度おもしろくする。」
BAKERUにとって、その「根っこ」が日本茶でした。
昔からあるものには、長く残ってきた理由があります。
だからといって、ずっと同じ姿でなければならないとは限りません。
眺める。
守る。
受け継ぐ。
それだけではなく、
ときには「遊ぶ」。
昔からあるものに、今の感性をぶつけてみる。
反対に見えるものを組み合わせてみる。
「もし今の時代に生まれていたら?」と想像してみる。
そうやって「古きもの」と遊んでいるうちに、
まだ誰も見たことのない文化が、ひょっこり生まれるのかもしれません。
伝統とは、過去から渡された「完成品」ではなく、
どの時代の人も、自由に楽しみながら手を加えることができる「未完成品」なのかもしれません。
そしてきっと、
完成しないからこそ、伝統は次の時代へと続いていく。
以上
「一流の思考ラボ」編集長でした。
