子どもは一つのスポーツに絞らない方がいい?|6つのスポーツ団体が示した「早く決めすぎない」という考え方

「サッカーを始めたなら、サッカーを続けた方がいい」

「野球をやるなら、野球に集中した方が上手くなる」

「いろいろやるより、一つに絞った方がいい」

子どものスポーツについて、そんな考え方を持つことがあります。

確かに、一つのことに集中するからこそ身につく技術もあります。

長く続けることも大切です。

でも、

「早く一つに決めること」は、本当に子どもの可能性を広げるのでしょうか。

2026年9月2日、日本のスポーツ界で興味深いプロジェクトが始まりました。


サッカー、野球、バスケ……6団体が初めて手を組んだ

9月2日、日本サッカー協会、日本バスケットボール協会、日本ハンドボール協会、日本ラグビーフットボール協会、全日本軟式野球連盟、日本スポーツ協会の6団体が、

「BALANCE IS BETTER JAPAN」

というプロジェクトを立ち上げました。

子どもたちのスポーツ環境づくりを目的に、国内のスポーツ関係6団体が連携するのは今回が初めてです。

掲げられたのは、3つの考え方です。

Less Pressure
追い詰めるのはやめよう。

More Collaboration
さまざまな年齢・競技・チームの人と一緒に活動しよう。

More Fun
楽しいから続けられる。楽しいからチャレンジできる。

つまり、

一つの競技だけに閉じ込めるのではなく、子どもがいろいろなスポーツに触れられる環境をつくろう

という動きです。


日本では「10歳前後」で一つの競技に絞られていく

今回の発表で興味深かった数字があります。

日本の子どもが一つの競技に絞り込まれる年齢の目安は、

10歳前後。

さらに、運動部を辞めた中学生のうち約30%が、

「本当は他のスポーツをやりたい」

と考えているとされています。

ところが、一度一つの競技を選ぶと、

「今さら別の競技を始めても遅い」

「初心者として入るのが恥ずかしい」

「別の競技をする場所がない」

といった壁が生まれます。

その結果、

「一つのスポーツをやめる」ことが、「スポーツそのものをやめる」ことにつながってしまう。

今回の6団体は、まさにこの状況を変えようとしています。


「続けること」は、本当にいつでも正しいのか

ここで少し考えてみたいことがあります。

私たちは、

「続けることは良いこと」

と考えがちです。

もちろん、継続することは大切です。

うまくいかないからすぐにやめる。

飽きたから次へ行く。

それだけでは、なかなか身につかないこともあります。

でも、

「続けること」と「一つに固定すること」は同じではありません。

サッカーをやってみる。

バスケットボールもやってみる。

水泳もやってみる。

その中で、

「自分はこれが好きだ」

と気づくかもしれません。

逆に、

「やってみたら、思っていたほど好きではなかった」

と分かることもあります。

それも立派な発見です。


やってみなければ、「向いているか」は分からない

子どもに、

「何のスポーツがやりたい?」

と聞くことがあります。

でも、少し考えてみると難しい質問です。

やったことがないものについて、

「自分に向いているか」

を判断することはできません。

これは食べ物にも似ています。

食べたことのない料理を前に、

「あなたはこれが好きですか?」

と聞かれても、本当のところは分かりません。

一度食べてみる。

それから、

好きか、嫌いかを決める。

スポーツも同じなのかもしれません。

選択肢を知ることと、選択することの間には、「試してみる」という大切な段階があります。


「早く決めること」が正解とは限らない

私たちは、ときどき、

早く決めること=良いこと

だと思ってしまいます。

早く得意なものを見つける。

早く進路を決める。

早く専門を決める。

そして、一つのことに集中する。

確かに、それがうまくいく人もいるでしょう。

でも、早く決めるということは同時に、

「まだ知らない選択肢を捨てる」

ということでもあります。

10歳で野球しか知らなければ、

自分がラグビーに向いていることには気づけません。

サッカーしか経験していなければ、

実はバスケットボールの方が夢中になれることにも気づけません。

選択肢が少ない段階で答えを決めてしまえば、

その答えは、

「自分に一番合っているもの」ではなく、「その時点で知っていたもの」

になってしまう可能性があります。


選ぶ前に、「選択肢を増やす時間」があってもいい

だからこそ、子どもの頃には、

「何を選ぶか」より先に、「何を知るか」

が大切なのかもしれません。

サッカーをやってみる。

野球もやってみる。

バスケットボールもやってみる。

途中で変えてもいい。

また戻ってもいい。

一つに決めなくてもいい。

そうやって経験を増やしていく中で、

「これは楽しい」

「もっとやってみたい」

「これは自分には合わない」

という感覚が少しずつ生まれます。

そして、その後で選ぶ。

選択肢を減らす前に、まず選択肢を増やす。

今回のプロジェクトは、そんな考え方を私たちに見せてくれているように思います。


これは、スポーツだけの話ではない

そして、この考え方は子どものスポーツだけに限りません。

たとえば、進路。

高校生のうちから、

「将来何になりたい?」

と聞かれます。

大学では、

「どの業界に行く?」

と聞かれます。

社会人になれば、

「自分の専門は何?」

と聞かれます。

もちろん、目標を持つことは大切です。

でも、

知らない世界の中に、自分に合ったものがある可能性

もあります。

営業をやってみたら面白かった。

経理を経験したら意外と向いていた。

文章を書いてみたら夢中になった。

人を教える仕事をして初めて、自分の得意なことに気づいた。

最初から全部分かっている人ばかりではありません。

むしろ、

やってみたから分かった

ということの方が多いのではないでしょうか。


「やめる」は、「失敗」とは限らない

もう一つ、大切なことがあります。

一度始めたスポーツをやめると、

「続かなかった」

と思ってしまうことがあります。

でも、

サッカーをやってみて、

「自分はバスケットボールの方が好きだ」

と気づいたのなら、

サッカーをやった時間は失敗だったのでしょうか。

そうではないはずです。

サッカーを経験したからこそ、

バスケットボールの面白さに気づけたのかもしれません。

つまり、

やめることも、選ぶための一つの経験です。

一つの道をやめることと、

挑戦することそのものをやめることは違います。

今回のプロジェクトが目指している、

「一つの競技をやめること」が「スポーツをやめること」につながらない社会

という考え方は、スポーツ以外にも通じるものがあります。


大人が「答え」を急がせすぎない

子どもを見ていると、大人はつい、

「この子は運動が得意だからスポーツ」

「算数が得意だから理系」

「絵が上手だから美術」

と、早くその子の得意分野を見つけてあげたくなります。

それは、可能性を伸ばしてあげたいという気持ちからでしょう。

でも、ときには、

可能性を見つけることと、可能性を決めることは違う

のかもしれません。

「あなたはこれが向いている」

と答えを渡すより、

「こんなものもあるよ」

と選択肢を見せる。

そして、

やってみる。

合わなければ変える。

面白ければ続ける。

その時間を認めてあげる。

大人にできることは、

子どもの答えを早く決めることではなく、答えを見つけられる環境をつくること

なのかもしれません。


早く決めるより、たくさん知る

今回、6つのスポーツ団体が競技の垣根を越えて手を組んだことは、とても象徴的です。

これまでは、

サッカーはサッカー。

野球は野球。

バスケットボールはバスケットボール。

それぞれの競技が、自分たちの競技人口を増やそうとするのが自然でした。

でも今回は、

「どの競技を選ぶか」より、「子どもがスポーツを楽しみ続けられること」を優先しようとしている。

そこに、この取り組みの面白さがあります。

私たちは、

「早く答えを出すこと」

を成長だと思いがちです。

でも、答えを急がなくてもいい時期もあります。

いろいろ見る。

いろいろ試す。

合わなければ変える。

そして、その中から自分で選ぶ。

「早く決める」より、「たくさん知ってから決める」。

スポーツでも。

進路でも。

仕事でも。

自分に合ったものを見つけるためには、

決断力だけではなく、決めないで試してみる勇気

も必要なのかもしれません。

以上

「一流の思考ラボ」編集長でした。


参考・出典

・日本ハンドボール協会「スポーツ6団体が連携プロジェクト『BALANCE IS BETTER JAPAN』を始動」


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